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「産業突然死」の時代の人生論

第24回
格差社会・日本を数字で裏付ける

経営コンサルタント 大前 研一氏
2006年4月12日

またしても銀行は預金者を裏切り続ける

 先月24日に発表された日本銀行の統計によると、2005年の個人金融資産の残高が、初めて1500兆円を突破し、1508兆円に達したことが分かった。2004年末の1433兆円と較べて約75兆円増。率でいえば実に前年比5.2パーセントもの伸びである。いうまでもなくこれは1979年の調査開始以来、最高額である。さて、そこで下の表を見て頂きたい。

 意外に思われる方もいるだろう。バブルが弾け、「不況だ」「未曾有の就職難だ」といわれ続けていた90年代にあってすら、実は着々と個人金融資産は増えているのだ。なぜこのようなことになっているか。理由は様々にあるが、中でも大きいのは金融資産を使わずに溜め込んでいる層、つまり高齢者が増えているからである。実をいうと、こういう構造の不況の国は、世界的に見てもごく珍しい。

 さて、この1508兆円の中身を調べていくと、もっと面白いことがわかる。それが下の『個人金融資産の項目別推移』のグラフだ。

 まず、1508兆円の多くを占めているのが定期性預金450兆円という事実である。定期性預金とはいわゆる定期預金や定額預金のことだが、これだけで全体の約1/3に達しているのだ。次に保険・年金準備預金が390兆円。この2つで総額の半分を越えてしまうのだ。ところがこの定期性預金、2000年を境に減少傾向にある。一瞬「あれ?」と思ってしまうのだが、実はここで見逃してはならないことがある。それが「流動性預金」の伸びである。

 流動性預金とは、いわゆる普通預金や当座預金のことだ。つまり、定期性預金に比べて金利が安い商品である(といって、定期性預金の金利が高いとは断じていえないわけだが…)。要するに銀行は、ペイオフのリスクを口実に、金利を払わなくてはならない定期性預金を減らして、金利を(事実上)払わなくてよい流動性預金を増やす、というずるいことをしているだけだ、ということがここでわかるのである。銀行が流動性危機から脱したのなら、元本保証の流動性預金も廃止するか、「余り意味がありませんので定期預金に戻して結構です」と一言あってしかるべきだ。

 
 

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