第22回
改めて楽天・三木谷氏の行動に疑念を呈す
経営コンサルタント 大前 研一氏
2006年3月29日
日本に志ある経営者はいるか
前回のコラムで、インドはサティヤム社の経営者であるラマリンガ=ラジュ氏のことを紹介した。主として欧米企業のSIとBPO請け負いで大きく業績を伸ばし、自社をニューヨークNASDAQ上場の優良銘柄にまで成長させつつも、しかし決して驕慢になることなく自国の貧困撲滅のために奮迅している立志伝中の人物である。こういう高潔な志を持った企業や経営者はインドには少なくない。
私はこのコラムで何度となく「サイバーは格差を埋めるために使うのが正しい」と書いている。確かにサイバー社会の中で、それぞれの格差は急速に開いているのは事実だ。しかしそれでいいと思ってはならない。格差を埋めるのもまたサイバーなのである、と。だからインドの尊敬すべき経営者を見るにつけ、サイバー社会の本来の在るべき姿を再認識させられる思いである。
翻ってわが日本ではどうか。いうまでもなく、これがはなはだ情けない状況である。いったい志ある経営者はどれだけいるのか。かつてはいた。渋沢栄一、岩崎弥太郎の後を継いだ岩崎小弥太…。近年では日本の音楽教育レベルを大きく引き上げたヤマハの川上源一氏や、「水道の哲学」を提唱した松下幸之助翁などもそうだ。身体障害者だけの工場を作って彼らに働く者、給料を稼ぐ者の喜びを与えたオムロン「太陽の家」の立石一真氏。この中には「政商」だの「御用商人」だのと陰口を叩かれた者もいる。だとしても当時の日本にとっては必要不可欠な人材であったことには間違いない。
身障者が働く工場「太陽の家(社団法人)」(大分 別府市)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)
確かに彼らには敵も批判も多かった。しかし彼らには間違いなく信念があり、自分の事業ドメインを堅持して社会に貢献しようという志があり、何より未来を見通す明確なビジョンがあった。ところが現在の経済界、わけてもサイバーチャンピオンなどと呼ばれている経営者の中にそういう人物がいるかというと、いない。私の見る限りにおいてはどいつもこいつも落第だ。たとえばそれは、毎度引きあいに出して申し訳ないが楽天である。
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