第171回
「おまえもか!」と非難したくなる世界の経済対策
経営コンサルタント 大前 研一氏
2009年4月7日
シェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』のなかに「ブルータス、おまえもか!」という有名なせりふがあるが、最近「××、おまえもか!」と、つい口をついて出てしまう事柄が相次いでいる。それだけ世界の経済対策が混迷している、ということでもある。
2008年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のクルーグマン教授は3月17日、ブリュッセルのEU本部で記者会見した。彼は「欧米の財政刺激策は不十分で失望している」と述べ、EUや米国の景気対策を鋭く批判したのだが、彼の言わんとしているのは、主要国経済を回復させるためには需給ギャップを穴埋めするための追加的な財政出動が必要だということだ。
これを聞いて、わたしは「クルーグマン、お前もか!」というせりふが口をついて出てしまった。彼は規模の景気対策だけでなんとかなると思っているのである。現在の不況の根本的な原因について分析をしていない。このコラムでわたしが何度も述べているように(※)、AIGやシティバンクの問題を解決するためには単なる景気対策では駄目なのである。
※例えば「金融大地震に世界がやるべきこと、日本ができること(2)」 や 「ダメな金融機関をつぶしてよい理由」 などを参照
日本は景気刺激策を10年にわたってやってきたが、それは効果がなかったことが証明されている。この期におよんでまだ規模の景気刺激策を行うのは、大怪我をして体調が著しく悪い人に腕立て伏せをやらせようとするのと一緒である。ノーベル賞受賞という肩書きは権威となるものだ。そういう立場の人物が馬脚を現すような発言をするのはいかがなものかとわたしは思う。
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