徹底した預金者軽視の銀行、それを許す日本という社会
つぶれても仕方ない銀行が延命させられたうえで、現在やっていることは何だろうか。銀行は大きくなりすぎて威張るようになり、なんのサービスもしなくなった。コンシューマーに対しては傘下の「サラ金」を通じて金を借りろと言い、中小企業に対してはまったく貸し出しをしない。一方、金融庁の審査が甘かったファンドには野放図に金を出し、これが今、昔のノンバンクに対する貸し付けのように腐ってきている。まともな個人や法人には金を貸さないのが日本の生き残った大銀行ということになる。3月の終わりは決算期。今週は困る企業が続出して大変なことになるだろう。
こういう状況であるにもかかわらず、銀行マンは、レイオフ(一時解雇)されることもほとんどないし、給与も日本で最高レベルのものを得ている。彼らは本来なら日本で最低レベルの給与になっても、自行がつぶれる寸前までがんばらなければならない立場であるのに、そうはしないでいる。預金者の金を守りもせず、日本の金融を支えるための努力も惜しんでいる有り様だ。その一方で経営が破綻すれば国に救済を求めるのである。なんたる虫のよさであろうか。
重ねて言うが、この100年を振り返っても、銀行がつぶれて誰かが困った例など見られない。北海道拓殖銀行の例を思い出してほしい。拓銀はつぶれたけれども誰も困らなかった。つぶれるべき銀行はつぶれてもかまわないし、そもそもつぶれる寸前まで死ぬような覚悟・努力を銀行に強いていかないと駄目である。いまのように「株価が下がって銀行の資産価値が下がりました」「では買い取り機構をつくって30兆円までその株を買い取りましょう」みたいなことをやっていては金融機関の健全な経営など望めない。
銀行がどれだけ心得違いをしているか、実例を紹介しよう。
三菱東京UFJ銀行は2月20日に、総額4500億円という国内最大規模の「個人向け社債」を発行すると発表した。株価下落の中で行き場を失った個人投資を吸収しようという試みである。だがここには大きなからくりがある。この社債の公募では、企業などには4%の金利、一般投資家(預金者)には2.75%の金利、という具合に振り分けて資金を調達しようとしているのだ。
いや、三菱東京UFJ銀行だけではない。三井住友銀行は既に1300億円の個人向け社債を発行しており、みずほコーポレート銀行も1000億円規模で同様の試みを予定している。いずれも似たようなからくりが潜んでいる。こういう一般預金者を平気で見下すようなことをしている連中を許してしまっているのが日本の現状なのだ。
銀行は預金者からお金を預かり、その運用益で金利を払う。しかし今の日本の銀行は金利をほとんど払わない。金融庁が日本の大銀行をつぶさないということは、社債のリスクと預金のリスクは大銀行に関しては同じということである。したがって8年社債というのは8年定期預金と何ら変わらない。預金者には0.2%しか払わない銀行が2.75%の利回りの社債で自己資本を強化するというのは究極の禁じ手である。金融庁がなぜこんな事を許したのか理解不能である。その前に預金者にちゃんと金利を払えと指導してこそ監督官庁というものである。
今の世の中を見ていると、銀行を恨みながら倒産していく企業は不動産業界をはじめ山のように出てきている。いっそのこと江戸時代の米騒動よろしく、銀行への焼き討ちでも起こったらいいとわたしは思っている。わたしとて本当はこんな物騒なことは言いたくないが、今の政府は銀行には至れり尽くせりで、ノンバンクは上限金利でつぶすつもりだし、不動産会社は結局明治以来の財閥の名前の付いたところしか(つまりは系列の銀行を持つところしか)生き残れない状態になっている。大銀行の「のほほん」とした状況を許せないとしている人々は少なくとも実業界には多いのは事実だ。
詰まるところ、米国・日本を問わず、政府が銀行・金融機関を聖域にしてしまっているのがまるで間違いだとわたしは思っている。つぶれるべき銀行はつぶし、そこからなにを得るか、将来のためになにを行うかがいま問われているのだ。銀行、ひいては金融機関をつぶした経験とつぶさなかった経験とが現在の日米両国にはある。その経験を将来のために大いに生かし、国民・納税者に負担をかけない、という指導理念を再確立してほしいと切に願う次第である。
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