ローソンのエーエム・ピーエム買収は何をもたらすか
このたびのローソンのエーエム・ピーエム買収については「市場飽和の地方に比べ、首都圏は人口増加も見込まれる」ことが理由だとされている。しかし店舗数飽和気味ともいわれている首都圏において、規模の経済は強く効果がないと見る向きもあるだろう。またエーエム・ピーエムは他社と比べて差別化の要因となる主たる要素も見当たらないといわれる。
ではこの買収のメリットはなにかとなると、それこそ前項で述べたように業界再編によるメリットが挙げられるのだが、ここでさらなるメリットについて述べておこう。一つは、フランチャイジー(フランチャイズ加盟店、加盟者)にとってのメリットだ。
ローソンは買収後もしばらくはエーエム・ピーエムの名称を変えずにやっていくと発表している。ただし、フランチャイジーが希望すればローソンに変えてもいいとしている。となると本部が「風林火山」みたいになってしまったエーエム・ピーエムの名前を残して経営をやっていこうというフランチャイジーはほとんどいなくなるだろうとわたしは思う。なぜならば、エーエム・ピーエムのフランチャイジーにとってローソンは、本部として魅力があるというだけでなく、場所や商圏によってはいくつかの選択肢があるからだ。
ローソンには「ナチュラルローソン」や「ローソンストア100」などさまざまな店舗形態・業態がある。だから、フランチャイジーにはそれらから好きなものを選ばせればよい。これはフランチャイジーにとっては大きな差別化の助けになるはずだ。それがこの買収のさらなるメリットである。ちなみに、この買収でエーエム・ピーエムの店舗をすべてローソンの名前に変えた場合、東京都内のローソンの店舗数は約1700になり、約1600のセブン-イレブンを上回る。
メリットはもう一つある。フランチャイジーにとって店舗収益はローソンになった方が確実によくなる、ということだ。圧倒的な規模の経済の違いにより、商品仕入れコストに大きな差があることは十分に推察できる。したがって先述のとおり、エーエム・ピーエムの名前を残して経営を続けようというフランチャイジーは実質的にはいなくなると思われるし、本部もやがては一つに統合してしまうだろう。ローソンブランドに一本化されたら、それはコストダウンにもつながる。エーエム・ピーエムの名前を残したら単純に2倍かかるコストが、統合により1.6倍程度に抑えられると見込まれる。
ただし、旧エーエム・ピーエムとローソンの店舗が近隣に立地されている場合、カニバリゼーション(共食いの競合)は避けられないだろう。どちらか強いほうが生き残るしかない。これで東京都内におけるローソンとエーエム・ピーエムとの単純合計店舗数がエーエム・ピーエムの赤字店舗数も含めて約10%(=150店舗)ほどは減少するものとわたしは見ている。こうしてコストダウンが見込まれ店舗数が減少すれば、収益が上がるのは当然のことだ。これがこの買収のもう一つ、いやそれどころか最大のメリットである。
以上、百貨店やコンビニ業界の動きをニュースで追いながら、小売業の現在をたどってみた。こうした経営戦略や業界再編の動きは、いままでのところ業界内部のコップの嵐、陣取り合戦、である。今後は消費者をいかにカードや宅配などで綿密に取り込んでいくか、顧客のニーズ別にいかにきめ細かいサブセグメント別のメニューが開発されるか、などが問われることになる。業界内部の最終戦争が終われば、今度は消費者のフランチャイズ(取り込み)をめぐる全くあたらしい戦場が開けてくる、と言い換えてもよい。
コンビニは大店法や酒販免許制などに守られた日本の特殊な環境で咲いたあだ花であった。しかし今後は「拠点」やネットワークを離れて、消費者が真に求めているものを探し届けるという新しい戦いを制したものが生き残る。そこにいよいよ動いて行かざるを得ない。
米国直輸入から、日本的味付けで、いまでは輸出産業にまでなっている「コンビニ文化」ではあるが、新しい舞台でのシナリオの模索がようやく始まろうとしているところだ。
■コラム中の図表は作成元であるBBT総合研究所(BBT総研)の許諾を得て掲載しております
■図表、文章等の無断転載を禁じます
■コラム中の図表及び記載されている各種データは、BBT総研が信頼できると判断した各種情報源から入手したものですが、BBT総研がそれらのデータの正確性、完全性を保証するものではありません
■コラム中に掲載された見解、予測等は資料作成時点の判断であり、今後予告なしに変更されることがあります
■【図表・データに関する問合せ】 BBT総合研究所, e-mail: bbtri@bbt757.com
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー
- 「おまえもか!」と非難したくなる世界の経済対策 (2009/04/07)
- 買いたくてウズウズしている米国民 ―― 株は底か? (2009/04/01)
- ダメな金融機関をつぶしてよい理由 (2009/03/25)
- 再編が進む百貨店とコンビニ業界 (2009/03/18)
- 日本の景気対策に欠けていること (2009/03/11)

