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「産業突然死」の時代の人生論

第168回
再編が進む百貨店とコンビニ業界

経営コンサルタント 大前 研一氏
2009年3月18日

 このところ米国がらみの話題が多い当連載であるが、今回も前回に引き続き国内に目を向けてみよう。百貨店とコンビニ業界の動きをニュースで追いながら、小売業の現在と今後をさぐってみたい。

 去る2月26日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、傘下のそごう心斎橋本店を、大手デパート・大丸へ売却すると発表した。売却額は370億円である。大丸は、隣接地に持つ大丸心斎橋店と合わせて店舗面積およそ7万8000平方メートルになる百貨店を立体的に展開し、競争力を高めるねらいである。

 セブン&アイHDは、イトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパンを傘下に持つ持ち株会社である。同社は、2006年1月に野村プリンシパル・ファイナンスが保有するミレニアムリテイリングの株を買い取って子会社化した。このことは大きく報道されたから、ご記憶の方も多いだろうと思う。このミレニアムリテイリングは、経営破綻したそごうと、経営危機に陥った西武が共同で設立した持ち株会社である(正確には、休眠会社を再起動させて商号変更した)。この買収によりセブン&アイHDは、コンビニエンスストアからスーパーマーケット、高級百貨店まで擁する一大流通グループとなったわけだ。そして今回、セブン&アイHDがそごう心斎橋本店の売却を発表した、という経緯である。

 わたしは、野村プリンシパル・ファイナンスがミレニアムリテイリングの株式をセブン&アイHDに売却した時点で、そごうと西武百貨店の魂は奪われたと思う。経営破綻・経営危機を乗り越えて統合した両百貨店の、その根幹にある経営理念が失われてしまった、と。魂がないのだから、セブン&アイHDは、そごうの旗艦店である心斎橋本店の売却にもなんら抵抗はなく、すんなり「切る」ことができたのだ。

 つまりセブン&アイHDは、ミレニアムリテイリングに対してなんのシンパシーも感じていないのである。

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