第164回
まだ先の見えない世界の自動車メーカー
経営コンサルタント 大前 研一氏
2009年2月18日
このたびの金融危機の「A級戦犯」たる米国において、いまだビッグスリーの問題に解決のめどが立っていないのは誠に憂慮すべきことである。世界経済を立て直し、再び生き生きとしたものとする上で、「自動車産業の再生」は非常に大きな鍵を握っていることは疑いがない。そこで今回は、金融危機の余震の中で、世界の自動車メーカーがどのような状況になっているのかを、最近のニュースを基に俯瞰してみようと思う。
米国の今年1月の新車販売台数は、前年同月比37.1%減の65万6976台となった。年率換算では957万台となり1000万台の大台を割り込んだ。これは1981年12月以来およそ27年ぶりの低水準である。メーカー個別に見ていくと、GMの新車販売台数は約12万9000台で、前年同月比49%減。クライスラーは同55%減、フォードは同39%減という数字であり、これではなかなか立て直せないどころか「立ち直れない」という印象を受けざるを得ない。
上の図は、2007年1月からの米国の新車販売台数の前年同月比をグラフにしたものである。いささかの乱高下は見られるものの2008年の初めあたりから落ち始め、7月ごろからはつるべ落としであることが分かる。
わたしは以前、当連載において日本がビッグスリーを買うのもよいだろうと提言した。一方で、トヨタが自社資本のみでビッグスリーのいずれかを買うことはかなり苦しいであろうということも併せて述べた。では、GMを救うには、具体的にどうしたらいいのか。わたしは、サマリタン的な支援がよいと述べた。そして、その場合のコツは、トヨタがGMに資本を入れないことである。
どういうことかというと、GM支援は支配が目的ではない。だから、これまでお世話になったGM、あるいは米国の重要産業の立て直しをお手伝いしましょう、ということを明確にするのだ。トヨタは、今のトヨタの経営をやりながら、もう1チーム(経営チーム)をつくって送り込む。お金は日本政府と米国政府に応分の額を入れさせればよい。例えば、日本が2兆円、米国が1兆円入れ、トヨタが経営する。V字回復の期待が出て株価が上がったら、前にも述べたように、第三者割当増資を行い、それでレガシーコストを精算してしまう。そうなれば本当に強い会社になる。GMの回復が確実になった段階で日本政府や米国政府は株を売り抜けてしまえばよい。両政府とも相当な利益を得るだろう。
ただし、トヨタはもうけない。役割が終わったら米国の経営陣にバトンタッチして帰ってくる。もちろん、請われればいつまでいても構わない。経営支配が目的ではないから、トヨタのチームは言いたいことが言えるし、組合ともきっちりと四つに組んで話し合いができる。クライスラーとダイムラーベンツの失敗を繰り返すことはないだろう。これは、たまたま章男氏が社長になったことでトヨタ経営陣が若返り、いままでトップの第一線で働いていた人たちが1セット、確実に浮くのではないか、ということを想定してのものだ。
GMが回復すれば、またGMの車を買う人もでてくるだろうし、GMを無償で助けたそういうトヨタが好きだといって米国ではトヨタ人気がいやが上にも上がってくるだろう。これがわたしの提案する支援策である。
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