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「産業突然死」の時代の人生論

第15回
太平の日本の放送業界に黒船が訪れる

経営コンサルタント 大前 研一氏
2006年2月8日

やがて一つのサプライヤーが世界中のコンテンツを独占する

ビデオ版iPod
動画を視聴できる新「iPod(アイポッド)」を披露するアップルコンピュータのジョブズ最高経営責任者(CEO)(アメリカ・カリフォルニア州サンノゼ)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 以前のコラムで私は「iTunes Music Storeは、近々にiTunes Storeに名称を変更する」と予言した。カラー液晶画面を備えた新しいiPodが動画にも対応し、iTunes Music Storeがビデオクリップも配信するようになった現在、いつまでも名称に「Music」という限定的な言葉を冠しておく意味はないからだ。

 現状では同ストアの映像コンテンツはまだまだ充実させるべき必要はあると思うが、しかしそれも時間の問題だろう。遠からず人気映画やTV番組、教育教材などもラインナップに加わるはずだ。お気に入りのコンテンツをダウンロードして、PCやTVで楽しむというライフスタイルは目前まで来ている。前回のコラムでも記したように、iTunes Music Storeは、世界のコンテンツサプライヤーの一大勢力になると私は見ている。

(参考URL)
http://www.apple.com/itunes/

 もちろん、これも前回書いた通り、アップルの独走をマイクロソフトが座視するはずはなく、Googleの動きも要注目といったところだが、当座の対抗馬となるのはやはりサービスが先行しているTiVoだ。今後iTunes Music StoreとTiVoが二大勢力となって、世界中のコンテンツを独占的に配信していくことになるだろう。現に私だって、著作権保護の問題さえクリアになるのなら、BBT大学院大学のカリキュラムを提供してもいいとすら考えているくらいなのだ。

 確かに現状ではまだ見えないところもあり、軽々しい判断は禁物ではある。だとしても安心できるコピーガードが完備されたときは、ちょっとした見物になるだろう。どんなコンテンツホルダーだって「どうせなら勝ち組に乗っかりたい」と考えるのだから、より有利なところ、より多く売ってくれるところへと大移動して、最終的には世界中のコンテンツは一つ、またはせいぜい二つのサプライヤーがほぼ独占という事態にまで至るのではないか。

 日本にも少数ながら、この状況を重く見て行動を開始した企業や経済人はいる。たとえばKDDIだ。同社は昨年末に米クォルコム社と提携したと発表した。いうまでもなくAUの携帯端末に動画を配信するためだ。また孫正義氏も、ソフトバンクとヤフーとで手を組んで大リーグ中継を始めとしたあらゆるコンテンツを提供するという発表をした。

 いずれも、前述の「コンテンツをダウンロードして楽しむ」という時代の到来を見越した動きであり、その意味では一定の評価はできる。評価はできるが、しかし私に言わせれば「まだ甘い」だ。コンテンツの質・量、それから(これが重要だが)コンテンツホルダーとの距離などの点で、まだまだ努力・改善の余地は残っている。

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