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「産業突然死」の時代の人生論

「グリーン・ニューディール政策」は有効か?

 オバマ氏が400万人の雇用を創出できると見通しを上方修正した件に戻れば、その大きな根拠は氏の政策のセールスポイントである「グリーン・ニューディール政策」だ。

 グリーン・ニューディール政策とは、平たく言えば、環境・エネルギー分野での新産業を拡大して雇用の創出を図る政策である。既に発表されている限りでは、

 (1)再生可能エネルギー分野に今後10年で1500億ドルを投資
 (2)太陽光発電、風力発電の生産量を今後3年間で倍増させる
 (3)2015年までにプラグイン・ハイブリッド車100万台の普及を図る
 (4)200万世帯の住宅に省エネ設備を導入。さらに送電網を敷き直す
 (5)2025年までに米国のエネルギー供給量全体に占める再生エネルギーの比率を25%にする

などが具体例として挙げられる。

 個々を見れば必要な施策であろうし期待の声も高まろうが、わたしはこのようなばらまき型の景気刺激策には限界があると見ている。雇用創出は使った分は確かに生まれるだろうが、ここ50年ほどで見れば財投の波及効果が検証されたことはほとんどない。ましてや景気下降期では100ドルばらまいても市場には30ドルくらいしか出てこないことはよく知られている。政府のカネはあまり効果がない、と知るべきなのである。より効果的かつ抜本的な対策はどういうものかということは、前回までの4回の当連載で述べたとおりだ。

 そのこととは別に、このグリーン・ニューディール政策はもう一つ大きな問題をはらんでいる。それは、グリーン・ニューディール政策の真の目的は、「雇用創出」という表向きの理由とは裏腹に、環境問題の研究開発に資金を投入して米国の優位性をこの分野において確保するというものだということだ。

 米国が環境問題において優位性を確保することの何が問題か。長短期的に見ても、そんなものを確保したところで少しも米国の景気回復にはつながらない点だ。

 どういうことか説明しよう。「米国が環境問題において優位性を確保する」とは、「テロリストとの戦いという目的において優位性を維持する」のと同じ構図である。ということは、オバマ政権下の米国がこれまでどおり自国の優位性を保持していくという路線を歩む限り、グリーン・ニューディール政策は「対テロ特需」と同じ轍を踏むことになる。その結果がどうなるかは、もはや多言を要すまい。先にわたしが英国ミリバンド外相の発言を「興味深い発言」とし、「テロとの戦いが巨大な産業を生み出してしまったのが問題であるという視点からこの発言をとらえている」と述べたのは、こうした構図が見て取れるからだ。

 こうなると、めでたく仕事にありついた400万人(オバマ氏の言を信じるとして)の来し方行く末も気になるところだ。現状では環境分野においては日本や欧州のほうが米国を大きくリードしている。米国はCO2排出量世界一であるなど、むしろ世界最大の環境汚染者だ。いまから研究開発に投資してもその成果が出るまでには5年や10年はかかるだろうし、となれば当然オバマ氏の任期中に成果が見られるとは期待できない。

 したがってグリーン・ニューディール政策は、米国にとって当座の雇用創出には有効ではあっても短期的な景気刺激策として有効であるとはいえない。そして景気刺激策が奏効しなければ遠からず雇用は再び悪化するのである。そのことが分からぬ米首脳ではあるまいが、にもかかわらずグリーン・ニューディール政策を推すということは「真の目的は雇用確保ではなく、優位性の確保だ」と考えるのが妥当、ということになるわけだ。

 いま、米国には世界の一員であるという認識に基づいた政策が求められているのであり、そのうえで「ソフトパワー」は用いられるべきなのだ。選挙戦中から“Change”をテーマとして掲げ、就任演説において「新しい責任の時代」の到来を強調したオバマ氏だが、米国こそがいま国際社会において、その一員としての「責任」を世界から問われようとしているのだ。

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