「いま」日本ができること、やるべきこと
最後に、今後日本が採るべき方向を示そう。過去に書いたことと重なる部分はあるが、内容を整理する目的もあって改めて列挙する。キーワードは「円」である。日本が世界に輸出して最も喜ばれるもの、それが「円」あるいはそれを使った戦略ということになる。
まずは国家ファンドを作り、日本の積年の悩みであるエネルギーや資源などを積極的に買うべきである。そして、米国の自動車メーカーに対しては良きサマリタンになるのだ。韓国の企業などはいまや二束三文なので、これらも買収の対象になるだろう。鉱山会社の買い取りももちろんだ。
こうして日本が世界の主要産業・主要企業を所有した時点で「我々は皆さんと共に繁栄し、世界経済のターンラウンドをお手伝いしましょう」とリーダーシップを発揮するのだ。こうして初めて日本は国際社会において歓迎され、第二次大戦では達成できなかった資源の廉価・安定調達が可能となるわけである。世界銀行やIMFに寄付してこの危機へ対応させる、というのでは、こうした目的はおよそ達成できない。それは「いま」の日本が最強の「円」を使ってやるべきことではないはずだ。
また足元の日本の景気を良くする方法、あるいは日本が自ら景気浮揚のために行うべき改革は、次の三つに尽きるとわたしは思っている。
1.相続税と贈与税を2年間だけゼロにする
これは高齢者の個人金融資産を若い人のところへ、すなわちニーズがある人のところへ移す方法として有効である。いまは相続税が高い。生前贈与という方法もあるが、それでも祖父母が亡くなった時には清算しなくてはならないため、あまり活用されていないのが現状だ。これでは消費に回らない。米国は2010年に相続税を一時的にゼロにする予定だ。オバマ大統領はおそらく気がついていないだろうが、これはクリスマスとイースターが一緒に来るくらいのすごい景気浮揚策になると思う。
また地下に眠っている資産、すなわちタンス預金や海外にある預金などについては、2年間に申告した分は相続税・贈与税を非課税とする。いわば刀狩りの資産版、プーチン型の金融政策だ。地下に眠っていた資産が表に出てくるため、景気刺激としてはいちばん効果が高い。
2.21世紀にふさわしい都市づくりを行う
日本はこれまで約100兆円の公共投資を行ったが、それらはいつも緊急経済対策としてのものである。だから用地買収が比較的簡単な北海道や沖縄などの、主として「過疎地」に金を使ってしまい、大都市は手つかずのままだ。わたしは大都市の、例えば東京の墨田区、江東区、荒川区、江戸川区など、消防自動車も入らないような住宅密集地が残っているところを中心に、大規模な都市の再構築をやるといいと思う。いまなら都市再生法を使えばできるはずだ。
なにしろ山手線の内側ですら平均2.6階の建物しかないのが現在の東京である。そこで、例えば建物の容積率を800%以上にまで緩和してしまう。わたしの計算では、これによって東京のほとんどの人が通勤時間20分以内に住宅を持てるようになる。また、この再構築と同時に地盤強化や防災施設の建設・インフラの整備なども行う。これは大体4-5%で回るような債権として売り出すことができるので、世界中から金を引っ張ってくることが可能だ。
3.統治機構の改革、道州制への移行
例の定額給付金の配り方すらまともに決められないことからも分かるように、日本では、一つの方針を決めることですら非常に多くの困難が伴う。これを解決するためには国内を道州単位に分割し(わたしの構想では11に分割する)、それぞれに大きな自治権を与えるべきだ。
11の道州がそれぞれベストと思うことをやれば、答えが11あることになる。当然、失敗するところもあれば成功するところもあるだろう。だが複数の答えを持つということが実はアイデアと実施状況・結果の競争になり、世界中からお金を持ってくる競争になるのだ。わたしは中央集権をここで終えて、東京に頼るのではなく、この道州が世界を相手にそれぞれの道を歩み始めるということが非常に重要なことだと思っている。いまこそ過度の中央集権という統治機構そのものを変えるべき時なのだ。
以上三つが、足元ではいちばん効果の高い内需振興策になるだろう。昨年から見ると非常に暗い印象を持つかもしれない2009年の幕開けだが、一人のリーダーが出てきてこうしたことをやれば、日本はガラッと変わるのだ。そして日本は、変わるための手段(資金や技術)をすべて内側に持っていて、外国から借りてくる必要がない。現在、こういう国は日本だけである。
変わるための手段を持っている日本が、実際にこうしたことをやるかどうかは、リーダーシップ次第である。運悪く政局は混迷し、国会では不毛な議論が行われている。嘆くべき事態である。いまの日本の不幸はリーダーの不在だ。あるいはそういういい加減な政治家が次々に出てきてもガマンしてしまった国民の側にも強い改革の意志が足りなかったのかも知れない。こうした国家ビジョンを出して、日本の、そして世界の救済に入ると明言してくれるリーダーの出現を、今年はいつも以上の期待を持って待つことにしよう。
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