金融安定化法案によるビッグスリー救済と失業対策
ビッグスリー救済のための自動車救済法案は事実上廃案となり、今後は金融安定化法の枠内での支援が検討されているが、解決のめどは立っていない。
仮にビッグスリーがつぶれて自動車産業が失われた場合、実に500万人もの失業者を生み出すことになる。これを避けるためにこの金融安定化法案のお金を使って救済を行おうというわけだが、これは超法規的というか、「脱法行為」と言わざるを得ない。そもそも金融安定化法案でどうしてGMを救うのかという根本的な疑問も残るが、もはやそんなことは言っていられない状態で、米国は約3500億ドルの資金を使う予定だ。
失業率はどうか。上のグラフを見てほしい。米国の失業率は2008年11月時点で6.7%。12月には7.2%になっている。それから現在に至るまでの間にもずっと失業は増えており、このままいけば最悪10%を超える局面も覚悟しなくてはならない。
米国は70年代にレーガン革命のあと失業の山になり、79-80年にちょっとだけ10%に達したことがある。さすがに10人に1人が失業者ともなると世の中は騒然とし、街中の雰囲気は非常に険悪になる。街に出てきた失業者にボランティアの人が炊き出しを行う。じっさい当時の米国では、そういう状況が街の至るところで見られたのだ。これが「失業率10%」の光景だ。
あの当時は日本企業の進出によって職を失ったということで、彼ら失業者たちは日本を非常に恨んでいた。今回の金融危機は、もちろん日本のせいではない。しかし、この怒りは、日本以外のどこかに向かうだろう。
サブプライムショック以降、2008年に入ってからの米国は11カ月連続して雇用が減ってきている。この1年に満たない短期間で実に合計191万人もの雇用が失われている。この雇用の減少はこのまま歯止めが掛かることなく、まだしばらく続くと思う。オバマ新大統領は300万-400万人分の雇用をつくると言っている。100兆円規模の財政赤字は覚悟の上だとも言う。しかし、公共工事の経済誘発効果はどこの国でも芳しいものではなかった、というのがこの50年くらいの経験である。環境関連で投資をしても、それが大きく過去の経験から異なったものになるという保証はない。むしろ研究開発などが実需につながるには5年から10年はかかるので、オバマ政権は果実を享受することができない。スモールガバメントを標榜したレーガン革命の果実はクリントンまで実らなかった。
一時オランダとドイツで、失業率20%に達した時代があった。そのときの両国政府の対応はワークシェアリングの推進であった。今回の米国でもそれは有効かもしれない。クライスラーも1カ月工場を止めるなどと発表しているし、トヨタも週休3日制の導入などを検討するようになるだろう。
もちろん、5人に1人が失業ということで、週4日働いて1日分を失業している人に譲るというスキームは二桁失業の実態に則したものではある。だが、日本全体で見れば4%の失業率ではワークシェアリングは有効とは思えない。日本でこの議論を始める人もいるが、まだまだそういう状況ではない。
雇用の創出には経済のパイを大きくすることが不可欠である。社会運動家出身のオバマ新大統領には経済のパイを大きくする発想よりも、パイをどう分け合うかという考え方が強い。共和党政権が8年間続いたために人々は変化を求めている。一度左側にかじを切ること自体はよいことだと思うが、パイを大きくする方策が無いのに分配の議論だけが暴走し、赤字国債を乱発すればドルの信任は地に落ちる。日本などのダメージはそちらの方が大きい。しばらくは「ハネムーンの100日」であるが、新政権が厳しい市場からの決断を迫られるのはそう遠い将来のことではない。
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