米国の巨額な保証、そして米ドルの行方
今回の危機を金額の面から見るとどうか。
先述したS&L危機の際、米国は2730億ドルの損失を出した(4ページの図参照)。日本の不良債権危機の際は7450億ドルの損失。いずれも巨額であることは確かだが、実はこれ自体はたいした数字ではない。このほかに銀行が損失として計上していない、国民が低金利を飲んだ損失額がある。
アジア通貨危機は4000億ドルの損失。今回の米国のサブプライム危機では8200億ドルの損失が推計されているが、それ以外に銀行以外の金融機関の損失があり、合わせて1兆4000億ドルの損失をIMFは予測している。
この損失をどう補填するか。日本の不良債権危機では、国民が低金利を受け入れ、配当されてしかるべき利息を補填に回した。だが、米国人はゼロ金利政策下の銀行に定期預金を預けたままにしておく国民性ではない。そこで引き揚げられた預貯金は、海外のどこへ運用先を求めていくのか、そこがまったく未知である。
この度の金融危機対応において、米国政府やFRB(Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)は、投融資や保証を通じて既に8兆ドル弱の資金枠を提供している。FDIC(Federal Deposit Insurance Corporation:米連邦預金保険公社)による銀行債務と決済性預金の保証だけでも1兆9000億ドルに上る。8兆ドルとは、米国のGDPの6割、日本のGDPの1.5倍の額に相当する。
それだけの保証を行って米ドル・米国債は大丈夫なのかという問題が生じてくる。もちろん大丈夫ではない。巨額の財政コストは、ドルおよび国債の暴落を招く危険性がある。
今、ドルの価値はある程度、維持されている。その大きな理由の一つがヘッジファンドの解消売りである。ヘッジファンドを解消した場合、戻ってくるのは2~3割程度。それでも売りに出すのは、ロスを出してもキャッシュが欲しいという構図があり、それによってドルが不足し、その高さが維持されているのだ。けっしてドルが信頼されているからではない。
この動きはあと数か月で終わるといわれている。そのときに「果たしてドルは大丈夫なの」と誰かが聞いた途端に、「大丈夫ではない」となり、そこでドルが空売りされる可能性が出てくる。これでいちばん困るのは日本と中国、湾岸諸国だ。米ドル立ての債権、国債に準ずるものを最も多く保有しているのがこれらの国だからである。今の米ドルは架空の強さを示しているが、このニーズが一巡した段階で落ちると見ておいたほうがよいだろう。
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