先進国の不況は世界に伝播する
経済の見通しに話を戻そう。
IMFは2008年と2009年の見通しを頻繁に変えている。直近の見通し(2008年11月)によると、2009年は、BRICsが比較的堅調に伸び、中東、南米、ASEAN、中東欧、NIEs(韓国・メキシコなどの新興工業経済地域)、CIS がいずれもまだプラスで、先進国だけが枕を並べてマイナスとなっている。
わたしはこの予測は間違っていると思う。実際は、ほとんどの国がマイナスで、成長著しい中国といえども下手をするとマイナスになるのではないかと見ている。なぜか。
先進国で消費が低迷する。すると資源の価格が下落し、資源国は輸出が減ってしまう。また、先進国が資金を引き揚げると、例えば中東欧やアジアの国々が苦しむということになる。
先進国の減速は金融部門の信用収縮にもつながる。この影響も大きい。というのも、耐久消費財の場合、ほとんどクレジットで購入するためだ。この影響は非常に大きい。
企業収益が悪化して投資が抑制されると、例えば新しい工場などはつくられなくなり、雇用が悪化する。当然のことながら購買力が低下する(加えて日本の場合、心理的な抑制も働いて、お金はあるのに消費が止まってしまう)。
このように、世界中で相互作用が悪く働くわけである。だから今年は、先進国だけでなく、世界中でシリアスな状況が待っている。IMFの予測は甘すぎると言わざるを得ない。
サブプライムショック以降の米国はどうなるか。信用収縮から企業部門の悪化や家計部門の悪化が連鎖的に進行するはずだ。米国は年金ファンドなどの運用も株で行っているため、企業の業績悪化は資産の目減りなど家計の悪化にもつながるからである。
資産が増えているときは安心して消費できる。だが資産が減ってくると、所得は減っていないのに消費が減退する、ということが起こる。いわば資産のマイナスのフロー効果だ。今、米国はそういう問題に直面している。この構造は欧州にも伝播し、信用収縮・企業悪化・家計悪化の負の連鎖が生じてくる。産油国では資源価格が落ち、中国やアジアなどの対米輸出は減少する。こうして米国の不況は世界同時不況へと拡大していく。
日本の場合、ファンダメンタルは悪くはない。しかしこの間、伸びていた産業は「中国特需」であった。構造不況業種といわれているような鉄鋼、造船といった産業が中国特需で戻ってきた。その意味では「バイアグラ経済」とでも呼ぶべきものである。中国需要がなくなれば、こうした産業も減速する。
ただ、そこで止まれば影響はまだ小さい。さらに収益を悪化させる方向へ進むこともあり得る。鉄鋼について言えば、中国はいまや6億トンの生産能力を持っている。日本のそれは1億3000万トン程度。中国の製造キャパは余ってくる。こうなると中国の鉄鋼が海外にダンピングされる懸念が出てくる。先日、中国政府は、鉄鋼の輸出に対して税的優遇措置をとると発表している。ダンピングの可能性は相当に高まっている。こうなると、価格の値下がりと販売量の減という、かけ算で効いてくる。国内鉄鋼メーカーの収益は急激に悪化する。中国特需は完全に終結したと見るべきだろう。
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