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「産業突然死」の時代の人生論

第2の原則
事態が段階的に進行することを理解し、局面に応じて適切なタイミングで適切な対応策を出す

 日本の経験から言うと、深刻な金融危機は三つの段階を経て進行し、それぞれに異なる対応策が必要になる。第1期は米国が現在直面しているもので、主に流動性危機が原因である。FRBは1000億ドル近い信用供与枠を用意しており、今では大手金融機関がその恩恵にあずかっている。日本では、この第1期で山一證券と三洋証券が銀行間市場で資金を調達できなくなり、姿を消してしまった。

 第2期は、不良債権の処理に伴って出現する局面である。金融機関は、自己資本を大幅に上回る不良債権の償却をしなければならない。しかも自社の株価は大幅に下がっているから、市場からの資金調達は不可能である。日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、北海道拓殖銀行は、経営不振企業や倒産企業に対する不良債権を抱え込み、立ち行かなくなった。この段階では、政府が資金供給を行って銀行を蘇生させ、正常な事業運営に復帰させることが大切だ。この過程で政府は不良債権を買い取ってあげてもいいし、債務の株式化(debt-equity-swap)で銀行の国有化を選択してもいい。不良債権の買い取りを主目的とするポールソン案は、この段階のためのものといえる。悪いアイデアではないが、もっと後でやる方がいい。銀行にとっては、現時点ではオオカミの群の中で標的にならずに生き延びることの方が、急を要する。こういう状態では落ち着いて不良債権の値段も決められず(高く買えば納税者が文句を言い、安く買えば銀行はどのみちつぶれる)、破局の伝播はくい止められない。

 第3期には、多数の事業会社の倒産が発生する。と言うのも、生き延びた金融機関は当局の厳しい監督下に置かれるため、昔なじみのお得意さま、すなわち企業や個人においそれと貸すことができないからだ。銀行からの借り入れに依存していた企業にとっては大問題である。ある日突然、銀行マンがやって来てこう言うのだ――「誠に申し訳ありませんが、おたくさまへの融資枠は打ち切らせていただくことになりました。今後、もうお取引はできません。今ご用立てしている部分も早急にご返済下さい」。こうして本来は優良な企業からの貸しはがしや貸し渋りが起きる。この第3期で、日本では数百社が倒産した。その中には、小売業で国内トップだったダイエーも含まれている。

 日本はしかるべき問題をしかるべきタイミングで対処することに失敗したとガイトナー・ニューヨーク連銀総裁は語ったが、まさにその通りである。日本政府は窮地に追い込まれてからやむなく対応していたが、問題が起きたとき直ちに機動的に手を打っていたら、日本はもっと早くに混乱を脱することができたはずだ。しかし米国が正しい優先順位で正しい時期に正しい問題に取り組んでいるのか、いままでの経緯を観察すると心許ないものを感じる。また事態が正常化するまでにどのぐらい時間がかかるのかは、現時点では定かではない。日本は15年かかった。ありがたいことに世界中を金融危機が襲っている今は比較的平穏だが、それは(皮肉なことに)これ以上悪くなる余地があまりないからである。

 このような段階的進行が物理の法則のようにどの金融危機にも当てはまるとすれば(わたし自身は、20世紀の主な金融危機すべてに当てはまる一般則だと考えている)、週末にあわてて対策を練り上げるといった(いまでは慣例となった悪習)を米国はすべきではない。今はweb2.0の時代だ。喜んで知恵を貸してくれる他国の人々にも呼びかけることが望ましい。

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