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「産業突然死」の時代の人生論

緊急提言
ポールソン案は額不足、手順も誤り

この記事は、大前研一氏が『The Financial Times』ならびに『The Japan Times』に寄稿した
緊急提言(英文)の全文を日本語に訳したものです。

経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年10月1日

 本稿を執筆している時点(10月1日)で、米下院は7000億ドル(約75兆円)の公的資金枠を目玉とする金融安定化法案を否決した(※)。議会が当面の優先順位を正しく理解しているのなら、この否決は妥当なのかもしれない。とはいえ今問題なのは、抵当流れで家を失った人を政府が助けるべきなのか、それとも市場に任すべきなのか、という議論ではない。現時点で何より重要なのは、市場に流動性を供給すること、とりわけ経営破綻にひんしている金融機関に供給することである。

※その後日本時間10月5日に法案は成立した。

 日本の、いわゆる「失われた10年」や、同じく90年代の北欧の金融危機を踏まえて見れば、米国の金融危機も段階を踏んで進行していることが分かる。それは物理的と言ってもいいような現象であるが、また同時に心理的な現象でもある。そして世界のどこの危機でも、同じようなことが起きているのだ。

 しかしここ数カ月にわたって米当局がとってきた「衝動的」でほとんど「英雄的」な行動をみる限り、彼らは何が起きているのかを正確に理解していないようにみえるし、過去の教訓をどう生かせばいいかも分かっていないように思われる。だからといって議会は英雄的な当局に、明らかに選挙狙いの修正案などで報いるべきではない。混乱がある程度収まり学ぶべき点が明らかになった暁には、議会に出番が回ってくる。

 今回の金融危機への米政府の取り組みにはどんな問題点があるか、また世界の銀行システムがメルトダウンする危機に対してどんな対策が可能かについて、これまでわたしは日本語では論じてきたが、英語ではまだなかった。しかし財務長官肝いりの法案が一時的にもせよ否決されたとあれば、遅きに失しないうちに、今回初めて英語でメッセージを発することにしたい。

 今回のような深刻な金融危機では、従うべき原則が三つある。

(1)システミックな危機であることを認識し、個別の問題として扱わない
(2)事態が段階的に進行することを理解し、局面に応じて適切なタイミングで適切な対応策を出す
(3)事態が収束したら再発を防ぐための世界共通の制度を構築する

 残念ながら米政府は、いずれの原則も守っていないようだ。その結果、既に十分深刻な事態をさらに一段と悪化させている。

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