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「産業突然死」の時代の人生論

第148回
リクルートが上場する道、しない道

経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年10月1日

 皆さんにとって一流企業のイメージというと、「株式を上場している」ということが目安の一つにあるのではないだろうか。しかし世間的には一流とされている企業でも、実は上場していないという例はいくらでもある。例えばサントリーや竹中工務店などがそうだ。

 十分に上場できるだけの条件を備えていながら上場しない企業の事情はいろいろだ。「経営に対して株主からいろいろ注文をつけられたくない」「敵対的買収の危険を避けたい」‥‥。それはそれで一つの経営判断であろうから、第三者がとやかく言うことではあるまい。

 ただ、上場しないままでは企業が持っているせっかくの活力が失われるのではないかと思われるケースもあるのだ。それがリクルートである。同社もまた、皆さんの感覚では「一流企業」であろう。今回は同社を例に、一流企業が遅ればせながら上場する手法を検討してみたい。

 リクルートにとって株式上場は、実は創業以来のテーマではあった。だが、いまだに成し得ていない。その理由は、言うまでもないだろう、1988年のリクルート事件だ。リクルートの子会社であったリクルートコスモス(現在のコスモスイニシア)の未公開株を大物政治家や財界人に資金斡旋した上で譲渡していたことが発覚し、日本中が大騒動に陥った一件である。

 この「戦後最大」ともいわれる一大疑獄事件を契機に、折からの不動産暴落もあおりを受けて、リクルートコスモスは大きな借金を抱えることになる。そのために親会社であるリクルート本体までがダイエー傘下に入る事態に発展した。リクルートの創業者である江副浩正氏といえば「学生ベンチャーの雄」とも称される立志伝中の人物だが、これは明らかに彼のミステイクである。

 しかし今では、リクルートはダイエーから株を買い戻して、ダイエーグループからは離脱している。しかも借金をすっかり返却し終えて、経営状況は著しく改善してさえいるのだ。業績を見ると、日本最大手の人材派遣会社スタッフサービスを買収したこともあって、売り上げは非常に伸びている。営業利益も年間1000億円以上出しているという好調さだ。

リクルートの業績推移

 営業利益率は若干下がってきているものの、それでも25%から30%の間を推移している。最終損益は、なんと年間800億円だ。借金がなくなった途端、いきなり800億円である。現在では実質的に無借金経営になっているので、この膨大な利益はすべて自社のものということになる。

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