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「産業突然死」の時代の人生論

米国の低迷は何年続くのか

 今、米国は、まさに日本と同じ轍(てつ)を踏んでいるのだ。日本ではこのプロセスを経るのに15年もの長き年月を要したが、米国の場合は若干早回しで動いているようだ。しかし、「早回し」とはいえ同じパターンで進んでいるのは間違いない。住宅関連で破綻した後、流動性危機のためにベアー・スターンズが崖っぷちに追いやられた。

 そして今、最も危ないとされているのはシティバンクである。

 同銀のヴィックラム・パンディットCEOは「45兆円にものぼるレベル3を処分する」と明言している。要するに流動性が乏しく時価の算定が困難な資産のことだ。これを売却するとおそらく簿価の半分くらいになるかもしれない。つまりそこからの損金は20兆円以上になることもあり得るということだ。にもかかわらず売却の方針を発表せざるを得なかったということは、放置しておけば市場が勝手にシティの200兆円全体の資産の評価をしてしまうからだ。

 いずれにしても数年以内にロスが確定し、巨額の資本金を増強しないといけなくなる。その場合、現在のシティバンクは世界からお金を集めてくるには力不足なのは否めない。資産処理で損金が膨らんでバランシシートが破損し債務超過となってしまった「長銀型」の破綻も十分に考えられる。となると、このシティバンクにも公的支援、もしくは一時国有化というカンフル剤が必要となるだろう。

 一時国有化のような救済策は、米国ではほとんど経験のないことだ。特に共和党の時代には企業救済をあまりやらないできたのが米国の歴史だ。これまでの歴史では、自動車メーカーのクライスラーで一度やったくらいだろうか。しかし、今回のことでファニーメイとフレディマックも、既に一時国有化に近いことになっている。

 この「住宅問題の破綻から始まって金融機関の国有化へ進む」というプロセスを見ると、(繰り返しになるが)ほとんど日本と同じパターン、同じような将棋倒しの順序で破綻が広がっていることがよく分かる。

 この後に日本は15年もの長い不景気を経験したが、米国の場合はもっと短く済むと予想される。というのは、日本の金融危機が起こった当時、東京で米国大使館付き財務官補佐をやっていたティモシー・ガイトナー氏が今ニューヨーク連銀の総裁をやっているからだ。彼こそがJPモルガンに融資をしてベアー・スターンズの破綻をくい止めた張本人だ。彼は事あるごとに、日本の金融危機が長引いたのは政府が事実を認めないで無策であったからだと主張して、FRBと財務省による強力かつ独断での緊急処理ができるように制度を変える推進者となっている。

 またゴールドマン・サックスの会長を務めたヘンリー・ポールソン氏が財務長官をやっていることも安心感につながる。投資銀行も公的監視の対象にするというのは彼が言い出したことだ。おそらく誰も知らない危険性を彼は既に把握しているのであろう。

 そうした最強のチームをもってしても米国の金融システムの危機はすぐには直らない。おそらく日本の3分の1、すなわち5年くらいは大変な時期を過ごさざるを得ないのではなかろうか。

 米国が日本と異なるのは、一般投資家が政府を信用してないことだ。日本の投資家は、どんなに不景気であっても政府を信用して、ゼロ金利になっても何も手を打つことなくじっと景気がよくなるのを待っていた。米国の投資家はそれほどおとなしくはない。米国の景気が悪ければ、ユーロなどほかのところに出て行くだろう。そこが日本の投資家との大きな違いだ。

 そういう国民性を分かっているのだろう。ポールソン財務長官やFRBのバーナンキ議長も議会では「日本と同じ轍(てつ)は絶対に踏まない」「10数年も低迷状態には絶対にしない」「財務長官が金融機関の救済を議会の承認無しにできるように!」と次々に制度改革を行っている。果たしてこれらの緊急処置で世界中に広がってしまった米国発の金融危機をくい止めることができるのかどうか。期待しながら経緯を見守りたい。

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