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「産業突然死」の時代の人生論

シンガポールに行けば分かる日本との実力の差

 実際にシンガポールに行ってみると、人々が豊かな生活を送っていることに驚かされる。みなさんも現地に行ってみれば、一人あたりのGDPが追い抜かれたことを実感できるだろう。

 例えば住環境。シンガポールの課長クラスの住むアパートを見ると「欧米のようだ」という感想を抱く。広くて豪華で、建物の下の階層には当然のようにスイミングプールがある。日本の同クラスの人が住むアパートと比べると、かなり違う。マンションの8割近くを政府機関であるHDB(Housing & Development Board)が供給しているので値段もリーズナブルである。今でも120平方メートルクラスの住宅が2000万円しないで手に入る。

 ほぼ唯一、日本が勝っていると思われるのは自動車だ。シンガポールには自動車の環境が悪い。自動車価格が懲罰的なくらいに高く設定されていて、日本よりも購入しにくいのだ。しかし、公共の交通機関が発達しているし、国土が狭いということも関係しているので、大きな不満にはなっていない。

 とはいえ、シンガポールは豊かになった。以前は「貧乏な割には生活レベルが高く、良い暮らしをしているもんだ」と思う程度であったが、実際に抜かれてみると、「これが日本とシンガポールの実力の差だった」と実感せざるを得ない。

国民と子孫に負担を求める日本

 わたしが皆さんに理解してほしいと思うのは、「このシンガポールの繁栄の源は、シンガポール自身にはない」ということだ。地下資源や原油が出るわけではなし、農産物が自国で出来るわけでもない。すべて世界で最も良くて安いモノを輸入して、生活の質を上げてもコストを抑えている。名目の一人あたりGDPが日本並みということは、実質の生活実感は日本よりはるかに高いということである。繁栄はほとんどすべてを海外から呼び込んできたものである。要するに開放経済なのだ。世界中から金、人、モノに来てもらう「貸席経済」なのである。そのために邪魔になる規制を撤廃して、世界中の力を借りられるようにしている。だからこそシンガポールの今の繁栄があるのだ。

 世界には今、余剰資金があふれている。企業も金も魅力のある所に集まってくるというのがグローバル化した経済の本質なのである。

 対して日本はどうなのか? まったく逆さまである。開放経済ではなく閉鎖経済である。世界から金、人、モノが来ない。だから足りない金を国民から借りる。それでも足りないから子ども、孫から借りてくる。

 その例が国債だ。国家予算が足りないからと、どんどん国債を発行する。しかし、その国債は借金だから返済しなくてはいけない。では誰が返済するのか。そのめどは立っていない。少子高齢化ということを認識しているくせに、借金の先送りをしている。もちろん国民一人あたり1000万円近い借金を子孫が返還できるわけがない。つまり、世界に救済を求めないで子孫に付け届けをしている国の先は、思っている以上に暗いのである。

 シンガポールではテマセックやGICという政府系金融機関が年金などの運用をしており、この30年近くにわたって年率10%近くで増えてきている。現役世代は安心して引退できるのである。このあたりもシンガポールの「集団IQ」の高さを示している。

 こうしたすべての点において、日本はシンガポールから学ぶべき点が多い。今の日本は自ら墓穴を掘っていると言うしか表現の仕様がない。

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