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「産業突然死」の時代の人生論

環境を優先する視野の狭い人々

 最後に、食料価格の問題と関連して環境保護論者について触れておきたい。

 彼らはいつも「風車がいい」とか「太陽光発電はクリーンだ」「地熱発電は素晴らしい」「バイオエネルギーがいい」などと主張する。しかし今回の食料品高騰の影響で明らかになったように、本当にそういう代替エネルギーが必要十分条件を満たしているのかどうかを、彼らは本気で検討しているのだろうか。わたしはいつも疑問に思う。

 風力発電は、技術的には一応確立している。しかし、それでどこまで必要な電力が賄えるのか。環境に関しても風車が林立する光景を見れば、少なくとも視覚的には意見の分かれるところであるし、鳥などの死骸が散乱している光景を見れば自然との調和には疑問符がつく。おそらく平らな農地が多いデンマークあたりの10%くらいの供給が限度ではないかと思われる。

 太陽光発電もそうだ。たしかにクリーンなエネルギーではある。しかし東京に必要な電力を太陽光発電で賄おうとしたら、(仮に光電変換の効率が40%になったとしても)東京都全体を発電パネルで覆っても間に合わないのだ。せいぜい年間日照日の多い地域における補助エネルギー止まりであろう。

 また、遠隔地に作れば送電ロスの問題がバカにならない。設備の建設で消費されるエネルギーは、いつになったら償却するのか。施設の維持コストはどれくらいかかるのか。

 わたしは環境保護そのものに異論はないが、こうした大局的な見方をしないまま“クリーンエネルギー”を推進しようとする勢力に対しては強い疑念を抱く。

 クリーンエネルギーが環境にはいいのは明らかだし、今後も研究開発を続けていく重要性もわたしは理解している。しかし現状では「まだまだ」なのだ。環境にもよくて、人々の生活に必要な電力をすべて賄えるようなマジックはいまだ存在しない。また太陽光をエネルギーに転換する化石燃料、バイオ燃料、光電パネルなどよりも、(アインシュタインの『E=mc2』を用いて)質量をエネルギーに変える原子力の方が格段に環境に優しいし、生態系との取り合いにもならないことを理解すべきなのだ。

 この明々白々な事実を直視せず、やれ「風力だ」それ「太陽だ」と主張する人たちを見ると、わたしは「ああ、彼らは人命より環境が大切なのだな」と皮肉の一つも言いたくなるのだ。

 ここ数年、世界は地球温暖化という「不都合な真実」の防止に向かって進んできた。それ自体は、繰り返すが、意味のあることだ。しかしこの度の食料高騰は、図らずも環境保護を推進する勢力の足元の脆弱さ、地球規模でのエネルギーと食料との取り合い、代替関係、を露呈する結果になった。

 今後の動きとしては、穀物相場などに関して投機資金が殺到し不必要な食料危機にならないような世界的な“規律”が、欧州を中心に俎上(そじょう)に載ってくるであろう。そして最終的には「限りある」食料が「限りのない」過剰流動性の犠牲にならないための監視機構の設立などが議論されることになるだろう。

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