ユニークなファンドを作って集金でも高揚感を
もう一つの課題は資金だ。建設に要する費用はおよそ5兆円。JR東海はそのすべてを自社で調達してリニア新幹線を作り上げる考えを持っている。その意気やよし、と言いたいところだが、わたしの目からすると「正直、難しい」と思う。JR東海は日本有数の大企業だが、それでも5兆円のすべてを負担したら、経営状態がガタガタになる可能性がある。
ではどうやって必要な5兆円を捻出するか。わたしは、日本の高揚感を高めるためにも、「世界一のものを作るファンド」を提案したい。例えば、高齢者が自分の死後に財産を寄付するファンドだ。死んだ後になら、自分の財産を日本のために使ってほしいという高齢者は、少なくないはずだ。いま日本には1550兆円の個人金融資産があるが、その大半が使われないまま残されている。その一部を、死後には「日本が再び世界一になるためのファンドに寄付する」と約束してくれた人の財産を足し算すれば、ファンドにたまる予定額が分かる。
まだ寄付はされていなくても、いずれは入ってくるお金だ。それを基に銀行と交渉すれば、超低金利で融資を受けることができるだろう。当人の死後に寄付が確定したものを次々に事業資金として取り込んでいけばよい。そういうおもしろいファンドを作ったら、5兆円を確保できるのではなかろうか。
中央政府の役割はこれを無税にしてあげることだ。どのみちJR東海の事業収益はその分向上し、そちらには課税するわけだからあまり大きな違いはない。JR東海の事業運営上のリスクがその分軽くなる、というメリットが大きい。
またはユニークな債権を出してもいい。収入の10%を債券の数で割って、少なくとも開業後20年間は毎年配当する、というものだ。完成するのが今から17年後ということは高齢者がこの債券を買ったら、おそらく子孫が配当を受け取ることになろう。ここでもその分は相続の対象から外す、などの工夫が望まれる。
この債券ではJR東海の収益ではなくリニアの総収入の10%を分配する、という仕掛けである。これはJRの経理操作やその時の損益状況に影響を受けないので、安定した配当を受けることができる。つまり、年金感覚で購入してくれるだろう。ここで断わっておきたいのは、利益の10%ではなく、収入の10%ということだ。利益が出るまでは当分かかるだろうから、収入でなければ債権を買った人にメリットがない。
JR東海は、そういった少し面白みのある資金集めを考えてみてはどうだろうか。そういうことをすれば国民的にも関心が高まるはずだ。
幸い日本には世界のどこにもないほどの個人金融資産がたまっている。このカネは今の政府を信用していないから、市場には出てこない。「イザと言う時のために」ひたすらムダにたまっていっている。高揚感をもたらすプロジェクトに税制的なメリットが講じられ、あるいは一定の収入をもたらす仕掛けの債券となったら、それに協力してくれる人はおそらく非常に多いだろうと思われる。
日本初の、そして規模的には世界でも初めての本格的なリニア新幹線がもたらす高揚感は、将来の日本にとっても陰に陽に好影響を与え続けてくれるとわたしは思う。要はJR東海の一見無謀な事業計画を、高みの見物で眺めるのではなく、政府も含めて、その無謀さに乗っかる、ということがここでは肝心なのではないかと思われる。
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