第127回
わたしがリニア新幹線を支持する理由
経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年5月7日
当連載の125回、『新福岡空港にみる財界人の駄目さ加減』で、わたしは福岡空港の移転を目論む勢力を批判した。皆さんもご存じのことと思うが、わたしはおよそ日本の公共事業を褒めることはない。公共事業、わけても土木と名のつくものはほぼ例外なく、財界と一部政治家・官僚を潤して終わりだからである。
念のため書いておくが、わたしは必ずしも財界が(あるいは政治家・官僚が)潤おうことをとがめるのではない。地元の人々に、ひいては国民に利益が還元されないまま、財界「だけ」が潤うことを批判するのだ。しかも新福岡空港に関しては東アジアのハブとなる千載一遇のチャンスを逃すことにつながる。相応の妥当性があり、それなりの経済効果が見込める公共工事ならば積極的に応援することだってやぶさかではない。
超特急構想『リニア新幹線』は、わたしも支持する数少ない“公共事業”の一つだ。日本でのリニア新幹線の開発研究は、1960年代から連綿と続いている。リニア新幹線は、子ども向けの学習雑誌でもしばしば特集に取り上げられてきたから、宮崎や山梨の実験線を走るテスト車両のグラビアを見た記憶のある人も少なくないはずである。
現在、このリニア新幹線の実現に向けた動きが活発になってきている。JR東海の発表によると、17年後の2025年には第一段階として東京-名古屋を結ぶという。最終的には大阪まで延長する計画だ。報道では、リニア新幹線は東京と大阪を約1時間で結ぶという。
わたしがリニア新幹線を支持する理由は簡単だ。一つには、現状の東海道新幹線の輸送需要が高まる一方で、「供給」は限界に近づいていること。JR東海も、より高速で走行することが可能な新型車両を導入したり、ダイヤ改正をしたりして頑張ってはいる。だがそれは、しょせん(といっては失礼だが)対処療法であって根本治療ではない。本当に輸送需要を賄うのなら、それこそリニア新幹線を新設するくらいの思い切った処置が必要だ。
そしてもう一つの理由は、いまの日本には夢がないからである。
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