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「産業突然死」の時代の人生論

財界人好みに造った広島空港の成れの果て

 その典型が広島空港だ。もともとは観音町(かんおんまち)という、市街にごく近い場所に存在していたのだが、1993年に三原市の山中に移転させた(位置的には広島市と福山市の境界に近いところにある)。都市から遠くなったため、利便性は著しく下がった。

 それだけではない。山の上という気象の変わりやすいところに空港を造ったため、霧が出たら飛行機を飛ばすことができずに欠航してしまう。わたしも数回、講演に行くときに閉鎖され、一度は福岡、もう一度は岡山から新幹線で駆けつけた。多くの人はこうした問題があるために新幹線を多用するようになり、期待ほどには旅客数は増えなかった。アジア大会の時をピークに海外便も次第に減ってきている。

 旧広島空港は現在、「広島西飛行場」と名称を変えている。わずか2就航便だけのこじんまりとした空港で、年間利用客数は6万人程度。毎年5億円もの赤字が積み重なっているという。当然、地域経済にも悪影響が出ている。広島西飛行場から広島空港への直行便は存在せず、トランジットしようと思うと2時間以上もかけて電車・バスを乗り継がなくてはならないというお粗末さだ。

 嘆かわしいことに、広島空港を山の中に移転させた張本人の財界人たちは、いま元の場所である観音町に主として東京行きの便を復活させようと動き出している。無節操の極みと言うべきであろう。大工事をしたいがために、自分たちが山の中に移転させておきながら、このやり方はないだろう(もっとも移転の当時は、福山市出身の宮沢喜一氏の働きでこの場所に決まったという一面もあるのだが)。

 いま、このような話が全国至る所にある。圧巻は神戸空港と静岡空港(建設中)だ。前者は伊丹と関空の間に付け入るスキがあるはずもなく、有用性があるのは1日数便と貨物ぐらい、そして後者はスズキとヤマハの社員のための成田便くらいしか有用性がないのではないか、といわれている。静岡空港の下には新幹線が通るのに停車しないということで、HPをみると高速道路とのつなぎのよさがうたわれている。

 なぜこのようなことになるのか、ということを考えると「日本の空港は今の都道府県別ではなく江戸時代の藩の単位で作られる」と考えると理解しやすい。青森は南部(八戸)と津軽(青森)、秋田は秋田のほかに能代が、山形は山形のほかに庄内がある。福岡も福岡のほかに北九州がある。長野も松本では気に入らないと、「長野平野に空港を!」という運動が昔から続いている。

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