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「産業突然死」の時代の人生論

第122回
中国よ、10年後の世界を見定めよ

経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年4月2日

 今、中国が揺れている。皆さんもご承知のとおり、その原因は「中国の火薬庫」とも言えるチベットでの暴動だ。

 簡単に状況を整理しておこう。そもそもの発端は、今年3月10日、チベット自治区ラサにあるデプン寺の僧侶による抗議デモだ。それが3月14日には大規模な暴動に発展した。事態を重く見た中国政府は鎮圧に乗り出し、多くの死傷者を出した。

 米国の短波放送である自由アジア放送は、以下のように事態を報じていた。いわく、僧侶や尼僧を含む10人あまりのチベット族がチベットの旗を振り、ビラを配りながら抗議活動を行なったところ、中国政府の武装警察が暴力(発砲を含む)で彼らを鎮圧した。そのため数十人の死者を出すに至っている‥‥。

 チベット人民に深く尊敬されている聖職者に対して、国家による突然の暴力。これで現地はパニック状態になったという。またデプン寺からジョカン寺まで300人の僧侶が参加してデモ行進する計画があったが、市中心10キロの地点で武装警察に鎮圧され50人以上が連行されたという報道も見聞した。

 まもなく北京オリンピックを迎える中国当局は、この手の紛争には慎重の上にも慎重を期して当たらなくてはならない。中国当局は「僧侶などの抗議行動はチベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世の一派による組織的行動だ」と非難し、自分たちの行為の正当性を主張している。下手な対応といえよう。実際、オリンピックへのボイコットの声さえも聞こえている。

 また殺りくの兵器は使ってないと言いながら、死者に銃弾の撃ち込まれた跡のあることを海外メディアが報じると渋々認めたりしている。これでは20年前の中国政府に逆戻りだ。また、今YouTubeで世界的に話題になっているのは、チベットからネパールに至る標高5000メートル級の極寒の地で、チベット難民の隊列が中国兵によって狙撃され倒される衝撃的なシーンだ。

 胡錦涛総書記が鎮圧に当たった20年前のチベット暴動の時と今との大きな違いは、こうした“事実”が次々に世界中の衆目にさらされることだろう。新橿ウイグル地区での連鎖的な暴動も中国政府にとっては頭の痛い問題だ。

 インドにいるダライ・ラマ14世(現在はインドに亡命中)は、当然のごとく中国当局の主張を否定した。今後はその反発による更なる鎮圧行動も起こり得る状態だ。こうなると諸外国も中国当局に対して黙ってはいまい。特に人権問題にはうるさい欧州と米国がいろいろと言ってくるのは確実だ。ダライ・ラマ14世は、これから日本をはじめ世界中に旅して自らの関与を否定し、世界の同情を集めることであろう。

 ホワイトハウスの報道官も中国に対して自制を求めている。また多くの人権団体も動くに違いない。なかでも注目したいのは、チベット亡命政府のあるインドでの動向だ。この暴動とその対応を契機にして、インドと中国の関係が微妙になるのは必至である。

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