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「産業突然死」の時代の人生論

米国には落ちたことを演出できる人材が必要だ

 だから、わたしがブッシュ大統領、あるいはバーナンキ議長であれば、米国経済をなるべく早く、落ちるところまで落としてしまう。そして回復できそうもないくらいの急激な下げ、いわゆる「ガラ(全面的かつ大幅な下げのこと)」を来させる。

 そうなればしめたものだ。今度は世界中の余ったお金が「落ちきったから、今度は上がる番だ」「今が買い時だ」と米国に集まってくるだろう。13年ぶりのドル安という現在でも、ドルを買い時だと見ている人はいるのだ。ガラを演出することができれば、相当なお金が集まってくる。

 逆に、この状況で米国にお金が流入した後に、本当のガラがやってくるほうが恐ろしいことになる。だから逆説的な言い方になるが、「米国にガラが来た」と演出してしまったほうがいいのだ。

 それを演出するには、倒産すべき銀行が倒産して、米国が国家としてその銀行を抱えて(あるいは世界中で資金を出し合って)、明確に「救う銀行はこの5行、つぶす銀行はこの5行」と決めてしまうことだ。それで「これ以上銀行はつぶれない」という安心感が広がったら、そこから先は、世界中からお金が集まってくるはずだ。

 だが、レイムダック(影響力を失った政治家)になっているブッシュ大統領にそれができるのか。あるいはおどおどしているバーナンキ議長はどうか。わたしから見れば「二人とも力不足」と言うほかない。

 もしFRBの前の議長であるグリーンスパン氏がいたら、実行できたかもしれない。彼には何を考えているか分からない神秘性があった。バーナンキ議長は、(1)世界中から300兆円を集めてきて与信機構を作る、(2)非常事態の「緊急看護室」を作りそこに信用不安から資金繰りができなくなった銀行を駆け込ませる、(3)複雑に混ぜ合わさったCDOなどの商品を一つひとつほぐして、安全なものとそうでないものに分けていく ―― などの“野戦病院”に近い作業をテキパキとやっていかなくてはならない。しかし、どう考えてもバーナンキ+ブッシュのコンビではこうしたことはできそうもない。まだまだ事態を甘く見ているし、5月に600ドルの小切手が各家庭に届けば景気は浮揚する、などと「天平の甍(いらか)」みたいなことを言っている。

 米国政府の中でそれが実行できそうな人材として、わたしはポールソン財務長官を挙げたい。彼はゴールドマン・サックスの元会長だ(サブプライム問題で苦しんでいるシティバンクの元会長、ロバート・ルービン元財務長官だったらみっともないことになってしまうが、幸いポールソンはサブプライムでもさや抜きでもうけたゴールドマン・サックス出身だ)。彼がリーダーシップを取ってこの対策を実現に移していったら、ブッシュ大統領は米国経済を救った人として歴史に残るかもしれない。チェイニー氏の代わりにポールソン財務長官を副大統領に据えてもいいくらいだ。

 この実行は、ブッシュ大統領の時代にやった方がいい。次期大統領選を見ていると、オバマ候補やクリントン候補には無理だろうと思う。ともに社会福祉など、まさに民主党型である。もう一人のマケイン候補にいたっては、およそ経済問題では頼りになりそうに見えない。外交においては強硬派・介入主義的で「鉄人マケイン」などと言われている彼である。戦争でもやるのであれば力を発揮するのかもしれないが、イラク戦争が国際的な批判の的になっている最近ではまさかそんなわけにもいくまい。

 結局のところ、ポールソン財務長官を専任にして、ブッシュ大統領の時代が実質的に終わる今年中に米国経済を立て直すしかないのだ。

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