これから致命的に重要になる若い人たちへの教育
教育の面でも、これからの時代では、若者たちのクリエイティビティを伸ばすことが大切だと大前氏は強調。
日本人は、けっしてクリエイティビティがないわけではなく、学校や企業で押さえつけられるのが問題だと説明する。
「学校に行けば、頭から答えを覚えさせられ、そのまま吐き出すのがいいことだと教えられます。そうして、クリエイティビティは押さえつけられてしまうのです。
でも、考えてください。いまや、学生はグーグルのサイトを携帯に登録している時代です。テストに使えば、いくらでもチェックできるし、カンニングもできます。
逆に言えば、その程度で点数をつけるようなテストが間違いなのです。いわば、これまでの日本の詰め込み教育は、100円のメモリほどの価値もありません。
いまの時代は、覚えたことを吐き出す能力よりも、どうやって調べればよいか、どのようにして答えにたどり着くのか、どうすれば、結果を出せるのか、を知った人が勝つ時代なのです」
大前氏のビジネススクールで用いるエアキャンパス画面
RSSによって最新のニュースを取り込みながら、精鋭たちとハイレベルの議論ができる
ここで大前氏は、自身が主宰しているビジネススクールの教育方針を紹介。クリエイティビティと競争力を養う方法の一端を解説した。
このビジネスクールは、すべてネットによるオールサイバー。日本語で授業が進められる授業には、世界中に散らばった人材が参加しているという。
「私のサイバークラスに参加することで、世界には同世代でどれほどすごい人間がいるのかということを実感できます。この意識を持つことで、はるかに勉強をするようになるのです。
狭い社会で、会社の仲間だけを見ていてはいけません。『オレはあいつよりはマシだ』『あんな奴には負けないよ』と、低レベルで安心しきってしまうからです。
やがて、そういう会社は、まとめてズブズブと沈んでいくことでしょう。ある日、ドアの向こうにホリエモンが現れて、まとめてバカにされるのがオチです」
大前氏によれば、ハーバードやスタンフォードの大学院の教育なども、すでに時代遅れだという。
大前 研一氏
「ハーバードやスタンフォードの教育がよくもてはやされますが、少なくともビジネススクールに関する限り、私にいわせれば19世紀の大学院です。
そのいい例がケーススタディです。ハーバードビジネススクールでは、ケースワーカーが9か月かけて完璧なケースをつくって授業に備えます。
しかし、このスピードの時代に、半年以上も前のケースが役立つでしょうか。『先生、その会社、もうつぶれていますよ』と生徒に指摘されるのが関の山です。
先生は、『すいません、書いてあることを前提としてこのクラスでは議論してください』と言うかもしれませんが、それではビジネスには何の役にも立ちません。そこに書かれたビジネスでダメだったから潰れたのです。
そう考えれば、ケーススタディは、リアルタイムでしかありえないことがおわかりでしょう。
私のビジネススクールでやっているのは、リアルタイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)です。これを、毎週1題出題します。内容は、現実の企業が、いままさに直面している問題を対象にするのです。
たとえば、『あなたがスズキ自動車の鈴木修会長だったら、ここでどう決断するか』とやるわけです。もちろん、経営者の立場で考えることが大切であり、けっしてアナリストのような第三者的な立場で評価するのではありません。自分がその人の立場ならどうするのかを常に考える癖をつけなければ、経営者にはなれません。ケースをいくらこなしても、傍観者は傍観者のままです。あくまで、自分がトップに立ったらどうするのか、を考える癖をつけなくてはなりません。
翌週には実社会での模範解答が示されるわけですから、誰が正しかったのかがすぐにわかるのがメリットです。こうして年に52題、二年で104題も考えれば、いざ自分の番がきたときには必ずうまくいくはずです」
大前氏は、従来の固定観念にとらわれた発想として、ビジネススクールで教えられるフレームワークを例に挙げる。
「バリューチェーンがどうのこうのと教えますが、ではデルやシスコシステムズの成功をそれで説明できるのでしょうか。21世紀のすべての成功企業は、バリューチェーンを破壊し、フレームワークを破壊するところから始まっているのです。マイケル・デルは今のデルモデルを論文で書いてあまり評価されませんでした。マイケル・ポーター流のバリューチェーンに従ってないから、という理由です。
確かに、ビジネスの標準的なフレームワークを知っている必要はあるでしょう。しかし、問題はいかにしてそれを突き破るかです。教えられたフレームワークを後生大事にしているようではいけません。ましてやそれを後生大事に記憶して、全てを学習したフレームワークで説明していたら、頭がフリーズしてしまいます。我々に必要なものは、固定概念を突き破るための勇気とビジョンなのです。
それには、何回も練習を繰り返すこと。しかも、自分のことと思って練習することです。いまや、ブロードバンドが普及して、オンデマンドで優れたクラスメートとディスカッションできる時代ではないですか。
せっかく、そういう環境ができているのですから、社員一人一人、そして日本のすべての人に、成功するためのトレーニングを積んでほしいのです」
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