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「産業突然死」の時代の人生論

思ったほどではなかった移民問題、そしてサルコジ大統領の挑戦

 話は少し脇道にそれるが、いま欧州で注目されている二つの動向に触れておきたい。

 EU統合やユーロ導入により、欧州では事実上国境がなくなり、人々は自由に行き来できる。だから「欧州では国を越えて移民が増える」と見られていた。ところがである、実際に動いたのは数万人規模に過ぎなかったのだ。確かに、ポーランドからドイツ、フランスへ、そしてルーマニアからイタリア、スペインなどへの移民は多い。だが、ルーマニアから世界に出ているのは200万人である。そのうちEU内で移動しているのは数万人だけだ。

 むろん数万人は少ない数ではない。実際にスペイン国内にルーマニアの集団が出来て政治問題化している。それでも予想された何百万人もの民族大移動よりはずっと少ない数であることは間違いない。このことから、国を越えた移動が自由になったとしても、人間は移動しないということが分かってきた。むしろ移動が不便であったころに命からがら東ドイツから西に逃亡してきた人の数の方がはるかに多かった。

 もう一つの注目はフランスのニコラ・サルコジ大統領と国鉄の戦いだ。

 ご承知の通り、目下フランスの国鉄はストライキをやっている。よほど劣悪な労働条件なのだろう、と思うだろうが、そんなことはない。仏国鉄職員は、フランスの中では非常に良い労働条件に恵まれている。彼らは石炭をくべて汽車を走らせていたころから、たくさんの特典を享受しているのだ。

 つまり今回のストは「もっと贅沢をさせろ」と要求しているに等しい。このあたり、まさに日本の旧国鉄やJALなどの組合と同じである。その陰で、国鉄職員より低い労働条件に甘んじているフランス国民は、交通機関のストライキにより不便を強いられている。

 これはフランス歴代大統領が逃げてきた問題なのだ。このいやらしさを克服しないと、フランスは本当の意味で21世紀に行くことができないだろう。そこに戦いを挑んでいるのが、サルコジだ。大統領になって間もないのに、そこにメスを入れようとしている。

 これが成功するかどうかは分からない。しかし成功したとすると、英国のサッチャーがフォークランドで勝ったような強さ、いや、サッチャーを上回る評価を得ることになるだろう。サルコジは思ったよりも早いペースで選挙の公約を実行に移しているし、万一そのうちの幾つかが成功すればフランスの経済は大きく飛躍するだろうといわれている。

 スペインの移民政策やフランスの過去との訣別、そしてユーロの揃い踏み。欧州が2007年に見せたことは、G.W.ブッシュの7年間でとみに強くなったアメリカ中華思想からの訣別であったのではないか、とわたしは思って年の瀬を迎えている。

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