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「産業突然死」の時代の人生論

 そして、「マルチプル経済」をお茶の間に紹介した人間として、ホリエモンの例が紹介された。

 「5年前に『新資本論』を書いたときの経営者の感想は、『ボーダーレスもサイバーもわかる。だが、マルチプルがわからない』というものが圧倒的でした。

 こうした世の中を一変させたのがホリエモンこと、ライブドアの堀江社長でしょう。そもそも、彼の会社というのは何をやっているのか、誰もうまく説明できません。インターネットのポータルサイトだといっても、楽天やヤフーにくらべるとかなり貧弱。サイトのなかを覗いてもポルノばかりです。いろいろな会社を買収してきましたが、サラ金なども入っていて、何をやっているか実態がよくわからない。

 会社の規模からいえば、どこにでもある地場スーパーと同じ程度でしょう。でも、地場スーバーの場合、どんなに業績がよくても、時価総額にするとマルチプルといってもせいぜい7、8倍。それに対して、ライブドアの財務諸表は地場スーパーとたいして変わりがないのに、時価総額は4000億円にものぼるのです。

 だからこそ、ニッポン放送買収騒ぎのときも、リーマンブラザースに依頼して転換社債という方法によって、あっというまに700億円を調達してしまいました。銀行で調達しようとすると、借りた金を返さなくてはならないが、これならば自分の時価総額で転換でき、借金も残らない」

 ところが、20世紀型のフジテレビのような企業は、このようなことができない。銀行から金を借りよう(倍率=1)としても追いつかないのである。

 大前氏は、世の中の変化を示した功労者として、堀江社長をそれなりに評価する。

 「一人の人間が社会をひっかきまわすことによって、茶の間にマルチプルの話題を提供し、日本でも株価収益率や時価総額が重要視されるようになったのは画期的なことです。

 もちろん、ホリエモンが5年後、10年後にどうなっているかはわかりません。坂本龍馬が明治維新を見ることがなかったように、本当の変革が起きる前に消えている可能性もあります。しかし、世の中に変化を示したという功労者には間違いありません」

 さらに大前氏は、マルチプル経済のもう一人の寵児、楽天の三木谷氏を俎上に乗せる。大前氏は、TBSとの経営統合を進める三木谷氏の発想を、一刀両断のもとに切り捨てた。

 「売上455億円の楽天が、なぜ3300億円のTBSに経営統合を仕掛けられるのか--これもまた楽天のマルチプルが100倍以上と高いためです。楽天の時価総額は1兆円を超えていますが、TBSは20世紀型の企業のためマルチプルがほとんどなく、時価総額は7000億円程度。だからこそ、楽天が有利に経営統合の話を進められるというわけです。2000年に、AOLがタイム・ワーナーに統合を仕掛けたのと似た状況といってよいでしょう。

 大前氏の見解によれば、IT社会の方向が本当に見えていたら、テレビ局などは買収するハズがないというのである。

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