<特別編1>
楽天・ライブドアなど日本のネット企業は時代遅れ!
~ネットワーク革新で21世紀をリードするための条件(前編)~
今回は、そのなかから、20日(木)に行われた大前 研一氏(経営コンサルタント)の基調講演「企業を変えるネットワーク革新 ~21世紀をリードするための条件~」の前編を紹介しよう。日本のネット企業の雄はまだ「見えない大陸」の真の意味を理解していないと辛辣なコメントが寄せられたが、それは半面、日本の今後の若い世代に大きな期待をかけているからに他ならない。
文/二村 高史
経営コンサルタント 大前 研一氏
2005年11月11日
講演に臨む大前 研一氏
「新しいネットワーク時代の夜明けは1985年にありました。そこから数えて、2005年の今年は、『AG21年』に当たります」と大前氏は話を切り出した。
「AG」の「G」とは、大前氏によればビル・ゲイツ(Bill Gates)の頭文字という。ウィンドウズのバージョン1が公開されて、ビル・ゲイツが表舞台に登場したこの年こそが、ネットワーク時代の「紀元」にあたるというわけだ。
大前氏は、それ以後を「AG」(After Gates=ゲイツ後)、それ以前の時代を「BG」(Before Gates=ゲイツ前)と呼んでいる。
「1985年は、まさに時代の変わり目でした。その後の日本の経済停滞を導いたプラザ合意もこの年。ソ連では書記長に改革派のゴルバチョフが就任。アメリカはレーガン政権による改革のまっただなかで、のちのクリントン政権下での好況の下地を作っていました。
一方、デルをはじめとする、いわゆる『NASDAC銘柄』と呼ばれる新興IT企業が、あちこちのガレージで誕生したのもこの前後です。マイクロソフトのウィンドウズバージョン1が発表され、シングルプラットフォームでアプリケーションソフトが管理できるという見通しがついたのもこの年でした」
もっとも、その後すぐにITが企業に広がったというわけではない。大前氏によれば、「AG11年」にあたる1995年に経営者の勉強会をしたときに、電子メールを使っていた人は250社のうち2人に過ぎなかったという。
結局、ほとんどの変化はその後の10年で起こり、なかでもここ5年で大きく加速してきたのだ。それにつれて、何よりも経済の構造が大きく変わってきたことを大前氏は強調する。
「私は、5年前に『新資本論』という本を書きました。もとは英語で、『The Invisible Continent』--つまり「見えない大陸」というタイトルで出した本を日本語にしたものです。ここで、私は『ニューエコノミー』というのは間違った呼び方だと述べています」
実は、「ニューエコノミー」(新経済)とされているものは、中身を分析すると、次のような4つの異なった経済要素の組み合わせだという。
1. 従来のケインズ経済(国民国家内の閉鎖経済)
2. ボーダーレス経済
3. サイバー経済
4. マルチプル経済
このうち、「サイバー経済」は、文字通り、サイバー空間で取引が成立する経済。ECがその代表例である。
「マルチプル経済」は、このあとでも説明があるが、要するに「数式上の仮説に基づいて、株価収益率(PER)、ヘッジング、デリバティブなどのテクニックを使って資金を調達し、世界市場を動かしていく経済」である。
以上のことが、同時に起きているのが現在の社会であり、その根幹にあるのがIT革命というわけだ。
そして、講演は「マルチプル経済」に焦点が当てられていく。マルチプル--つまり、企業や資金の価値が何倍にもなるのは、新しい経済構造のもとで、企業の時価総額の考え方が変わり、取引所が実際の資金の何倍もの掛け率を取り扱うようになったからだと大前氏は説明する。
「まず、昔といまとでは、企業の時価総額の考え方が違います。10年前まで、企業の時価総額は、次のように考えられていました。
――いまの事業計画に基づいて未来永劫経営したときに、得ることのできる利益の現在価値(NPV)。
しかし、これでは新しい経済構造にはついていけません。そこで私は、『新資本論』の英語版タイトルにもなった『The Inivisible Continent』という発想を使って説明することにしました。つまり、こういうことです。
――その会社が『見えない大陸』でテリトリーを占拠した場合、そこから将来生み出すであろう価値の総和を現在価値に直したもの。
企業の価値を、私は世界で初めてこう定義したのです。もちろん、従来のビジネススクールの考え方とはまったく違うものでした。そして実際に、その後成長した会社は、みなこのパターンだったのです」
DeNA 南場 智子社長
その例として大前氏は、オークションサイト「ビッダーズ」を運営していたDeNA(ディーエヌエー)の南場智子社長を挙げる。
南場社長は、携帯電話を活用するオークションサイトを考案。携帯カメラの画像を使ったモバイルオークション「モバオク」を開始したところ、設立5年目にしてようやく黒字に転じて上場できた。
「上場当時の売上は10億円台で、利益は1500万円台そこそこでした。ところが、上場してついた時価総額をご存じでしょうか。何と1300億円なのです。
これは、従来の企業価値からは説明できないでしょう。ただ、見えない大陸で新しいテリトリーを占拠したという発想からのみ、説明することができるのです。つまり、この会社は、この新しい分野(カメラつき携帯+若い女性+オークションの三要素で構成される経済空間))において、これからも利益を生み出すだろうという経済価値の総和として、1300億円という価値がついたのです。GOOGLEが創業7年にして時価総額11兆円を超えたのも“サイバージャングルの水先案内人”としてほぼ独占状態になるという期待値からです」のビジネススクールの考え方とはまったく違うものでした。そして実際に、その後成長した会社は、みなこのパターンだったのです」
大前氏は、「見えない大陸で、新しいテリトリーを占拠すること」を、アメリカの西部開拓に例える。
「カリフォルニアやテキサスを占領した場合、そこにはどのような価値がつくか。それは、単なる荒れ地の土地代で終わるのではなく、その土地の持っている潜在価値に対して時価総額が決まる」というわけである。
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