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「産業突然死」の時代の人生論

第5回
日本の衰退に歯止めをかけるには、教育の抜本的改革を

経営コンサルタント 大前 研一氏
2005年7月28日

投票に行かずに民主主義を放棄する若者
一番損をしているのは自分自身なのに

 厚生労働省は「そもそも年金は子供から親への仕送り」などと完全に居直っているが、ここまでの世代間の不公平があっていいのだろうか。正しい政治というのは、職業選択による差、居住地による差、年代による差をなくしていくことだ。それで国家ははじめて長期安定運営ができる。日本の場合、戦後の一時期、非常にうまくいっていたときもあるが、最近はそういうことが全く政治的に考慮されていない。その理由は明白で、若者が投票に行かないからだ。

投票する年配の女性

 日本の場合、絵に描いたように年齢と投票率がほぼ一致する。65歳の投票率は65%だが、25歳の投票率は25%、つまり4人に1人しか投票していない。これでは政治家が若者に有利な政策を打ち出すはずがない。そうしたところでペイしないからだ。逆に高齢者に有利な政策を出せば、必ずその政党は勝つ。さらに、投票率の高い地域、つまり田舎のための政策を立案すれば確実に“効く”のである。都市型サラリーマンの投票率も低いからだ。このような政治状況をもたらしているのは国民に原因がある。日本には民主主義というありがたいものがありながら、「最大多数の最大幸福」という民主主義の原則が機能していないのである。

●20歳代投票率と平均投票率の差 【クリックで拡大】

 全体の投票率が40%を割ると、例えば宗教団体や特定利益団体の組織票をまとめただけで25%ぐらいになってしまう。「分母が40%」の怖いところは、25%で圧倒的なマジョリティーになってしまうことだ。“後出しジャンケン”でその時々に勝った政党と連合を組んでいれば、確実に政権側につくことができる。投票率が低いからこそ、こうした事態が起きてしまう。

 そのためにも、日本も投票制度を変えて何かペナルティーを設ければいい。例えば、シンガポールでは投票しなかった人に対してその理由を書かせるし、オーストラリアでは20ドルの罰金を課す。実際これがかなりの抑止力になっていて、投票率はそれぞれ90%を超えている。90%を超えれば、確実にマジョリティー・インタレスト(大多数の利益)になる。

 ところが、日本の場合はマイノリティー・インタレスト(少数の利益)の状態がいまも続いている。現在の投票パターンでは「マイノリティーがマジョリティーになる」という皮肉な民主主義ができ上がっているからだ。従って日本の場合、サイレント・マジョリティーはノイジー・マイノリティーに圧倒的に押しまくられてきた。

 しかし、これはサイレント・マジョリティーが悪い。特に若い人は雨が降ったら投票に行かないし、晴れたら晴れたでどこかに出かけてしまって投票に行かない。そして、彼らは自分たちが一番損をしているという単純な事実を知らない。

 こう考えると、「日本人というのは“集団IQ”が低い」と言わざるを得ない。個々人を見ると問題はないのだが、集団としての知恵は非常に弱い。これまで述べてきたように、そのために値段の高い食品や商品をつかまされている。しかも、高いからといって安全性やおいしさに優れているわけではない。どうしてこんな因果な国になってしまったのか――。

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