欠かせぬ吹き上げ対策
台風による強風で住宅が損壊することもしばしばある。台風13号でも、竜巻以外の強風で多くの家屋が損壊した。延岡市の被害地を視察した日本風工学会会長の田村幸雄さんは、「延岡で見たような、ガラスや軒下が壊れて室内に風が吹き込み屋根を吹き飛ばす現象は、過去の台風でも多数ある。台風でも、吹き上げの風への対策は欠かせない」と話す。
垂木と軒桁をひねり金物やくら金物で留める、母屋と小屋束をかすがいや平金物で留めるなどが対策の例だ。詳しくは、「住宅の耐風設計施工点検指針(耐風指針)」(日本建築センター発行)に記されている。耐風指針をつくった日本住宅・木材技術センター試験研究所所長の岡田恒さんは、「吹き上げに対する仕様規定は建築基準法に示されていないものの、指針に示した金物を付けておくことは最低限の措置だ。これで、最大平均風速35m/秒まで耐えられることを計算で確かめた」と話す。
過去の台風の最大平均風速を見ると50m/秒前後が多いので、これでは不十分のように一見思える。これに対して岡田さんは「気象庁が発表する風速はかなり高い場所で測っている。指針で想定している2階建ての屋根の高さ(7.4m)で測ると、多くは35m/秒以下になるはずだ」と話す。
ちなみにA邸の建て替えを依頼されている松木さんは、桁、母屋、垂木のそれぞれを金物とビスで留め付ける、小屋束に2本のかすがいをハの字形に打つ、厚手の防火サイディングを軒天に使う、野地板をビス留めするなどを提案しているところだ。
ただ、耐風指針では耐え切れない場合もある。3階建てや周辺との高低差がある高台だ。高くなるに従い風速が増すからだ。
軽量鉄骨系住宅会社はこの点を考慮し、海岸線に近くて周辺との高低差が大きい高台に建てる場合に、垂木のサイズをワンランク上げて軒裏の下地を強固にするなどの仕様を、新たに作成した。
瓦を飛ばさない対策も不可欠だ。建築研究所が監修した「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」を参照してほしい。
これらを守っても、延岡市の竜巻のように、防ぎ切れない強風は起こり得る。そうしたときの備えとして、台風被害を補償する火災保険への加入も顧客に勧めたい。
■要するに
●耐風指針に示されている屋根の吹き上げ対策は、最低限欠かせないものと考える
●3階建てや、台風が頻発する高台に建てる場合は、耐風指針より頑丈にしておく
●台風や竜巻の万全な対策はない。風害を補償する火災保険の加入を勧める
【事件ファイル】竜巻で屋根が吹き飛ぶ
■事件の経緯
台風13号は、9月16日早朝に石垣島付近を通過した後、17日に九州に接近した。台風が九州の西海上を北上していた午後2時ごろ、宮崎県延岡市で竜巻が発生。複数の家屋が倒壊し、JR日豊本線の特急が脱線、横転した。竜巻の強度はF2と推定された。
竜巻は同日午後12時から1時半にかけて同県日南市と日向市でも発生し、約40棟の家屋が損壊。最大平均風速33~49m/秒(F1)と推定された。
台風13号は17日午後6時過ぎ、長崎県佐世保市付近に上陸。同市野母崎で最大平均風速46m/秒が測定され、野母崎の記録を更新した。その後、佐賀県、福岡県、北海道などを通過し、20日午前9時に温帯低気圧に変わった。
被害は16県に及び、家屋損壊の合計は約1万棟、浸水は約1100棟、死亡者は9人、負傷者は約440人に達する。日本損害保険協会によると、保険支払い金額は台風損害歴代5位の約1219億円となる見込み。
日経ホームビルダー(2006年12月号)
上記の記事「住宅事件簿:竜巻で屋根が吹き飛ぶ」は,『日経ホームビルダー』2006年12月号に掲載された記事です。
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