松浦 晋也氏
2008年7月29日
「限界集落」
梶井照陰著
フォイル
2008年2月発行
1470円(税込み)
2005年12月、総務省は同年10月1日時点で実施した国勢調査の速報を発表した。日本の人口は2004年10月1日と比べ、約1万9000人減少して1億2775万6815人となり、1920年の国勢調査の開始以来初めて減少した。
今後、日本では急速な人口減少と高齢化が進むと予測されている。その結果失われるものの一つが、高齢化が進む地方の集落だ。1960年代の高度経済成長以降、若者は地方から都市部へと流出した。都市で仕事を見つけ、結婚して家庭をつくった若者は、もう故郷へは帰らない。故郷に残された両親は、今や厚生労働省に“後期高齢者”などと呼ばれる年齢に達している。彼らが寿命を全うした後、もう集落には誰もいない。
高齢化が進み、消滅寸前となった集落を「限界集落」と呼ぶ。正確な定義は、「人口の過半数が65歳を超えており、共同体としての営みが困難になった集落」というものだ。本書はカメラマンである著者が、2007年の3月から12月にかけて日本各地の限界集落を訪れ、そこにどのような人たちがどのような気持ちで生きているかをまとめたものだ。美しい里の写真と、限界集落に住む老人たちの語りが収められている。
カメラマンが訪問者の視点で、老人ばかりとなった集落を尋ね歩いた記録なので、客観的な数値データや、今後どうすればいいのかというような提言は含まれていない。著者はひたすら集落の様子や人びとの語り、仕草、表情などを淡々と記録していく。
そこに現れるのは覆いようもない“落日”の印象だ。登場する老人たちは皆70代80代であり、なかには90代の者もいる。10年を経ずして彼らのうちの相当数はこの世を去るだろう。後に残るのは空き家であったり耕作主を失った田畑である。温暖湿潤な気候の日本では、すべてが速やかにうつろいゆく。空き家は朽ちていくだろうし、田畑は雑草が生え、ゆっくりと原生林へと戻っていくだろう。すべての家に主がいなくなった時、集落は消滅する。
著者がとらえたのは、消えゆく集落の最後の日々なのである。
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