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書評

もしも新型インフルエンザが強毒型だったなら

 今回の2冊が教えてくれるスペイン・インフルエンザのパンデミックの様子は、さまざまなことをわたしたちに教えてくれる。感染拡大の推移、社会の混乱の様子。パンデミックが起きた時にどのような対策を打てばよいかの教訓などなど。

 しかし同時に、現在懸念されている高病原性鳥インフルエンザによるパンデミックは、スペイン・インフルエンザとは違ったものになる可能性も念頭に置いておくべきだろう。

 一番大きな相違は、スペイン・インフルエンザが弱毒型ウイルスだったのに対して、高病原性鳥インフルエンザが強毒型だということだろう。

 スペイン・インフルエンザのパンデミックが起きた時点では、まだウイルスを検出する技術が存在していなかった。最近になって、当時凍土の中に埋葬されたスペイン・インフルエンザの犠牲者の遺体を発掘し、そこからウイルスを検出することでスペイン・インフルエンザが弱毒型、すなわち気道や腸官など人体の一部分のみで増殖するウイルスであったことが判明した。

 一方、高病原性鳥インフルエンザのウイルスは、全身の細胞に入り込み、増殖する強毒型だ。

 弱毒型と強毒型のウイルスの差異は、遺伝子のどの部分が具体的にどのように違うかまで、既に判明している。遺伝子の違いから、強毒型が弱毒型に突然変異する確率も見積もられており、強毒型 → 弱毒型の変化はあまり起こらないことが分かっている。

 つまり強毒型の高病原性鳥インフルエンザのウイルスが、突然変異の結果ヒトに感染するようになった場合、そのウイルスもまた強毒型である可能性が高い。

 弱毒型のスペイン・インフルエンザですら、これまで見てきたような被害を世界にもたらした。もしも高病原性鳥インフルエンザから、新型のインフルエンザが現れてパンデミックを引き起こしたら、スペイン・インフルエンザ以上の高い死亡率となって、より大きな被害をもたらす可能性があると考えなくてはならない。

 恐ろしい話だが、現実から眼を背けてはいけない。わたしたちは、強毒型のインフルエンザがパンデミックを起こすという前提で、対策を準備していかなくてはならないだろう。

 今、わたしたちは新型インフルエンザの脅威に備えていかなくてはならない状況にある。

 少なくとも企業や学校などで危機管理を担当している人は、今回の2冊を読んでおくべきである。いったんパンデミックが起きると、どんな社会状況になるのか、知識をつけておけば対策を考えることができる。スペイン・インフルエンザの起こしたパンデミックは、決して忘れ去ってしまってよいものではない。そこから教訓をくみ取るべき貴重な過去の経験なのだ。

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