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書評

松浦 晋也氏
2007年11月30日

「中国の危ない食品」

「中国の危ない食品」

周勍著、 廖建龍訳
草思社
2007年10月発行
1470円(税込み)

 昨年あたりから、中国製品の安全性に関する問題が世界を騒がせている。

 2006年から2007年にかけて、パナマではジエチレングリコールが混入した中国製咳止めシロップにより365人が死亡した。今年3月には、米国とカナダで中国産小麦を使用したペットフードを食べた犬と猫が、合計16匹死亡した。小麦からは殺鼠剤が検出された。今年5月には同じくパナマで、中国製歯磨きから致死量のジエチレングリコールが検出された。

 7月にはカリフォルニアで、中国産ショウガから基準値以上の残留農薬が検出された。ほうれん草から農薬検出、土鍋から鉛を検出、子どもが口にする可能性のあるおもちゃから、鉛や有機化合物検出‥‥などなど、中国製品からの毒物検出は、珍しくなくなってしまった。今や世界の工場となった中国は、同時に毒物の輸出国となった感がある。

 nikkei BPnetでも、NBonlineの世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」で中国食品の信じがたい実態がたびたび報告されている。下水に溜まる廃油から作る食用油食品用に転売される不純物を含む工業用塩毛髪から作る醤油衛生基準が明確ではない割り箸など。

 どうも中国国内では、輸出品で表面化している以上に、危険な食品が流通しているようだ。

 中国では何が起こっているのか。実態が知りたくなって本書を読んでみた。中国の有毒食品がメディアの話題となったからだろう、現在類書が数冊出ている。その中から「中国の危ない食品」を選んだのは、著者が中国当局に睨まれつつ、国内に留まって取材活動を展開しているからだ。著者は伝聞ではなく、実際に自分で現場に足を運んでいるだろうと判断した。

 残念ながら、本書には現場の生々しいレポートのみで構成されてているわけではない。中国国内メディアが報道した情報がかなり入っている。それでも、著者は、現場取材で得たとしか思えない情報を次々に繰り出してくる。

 明らかに中国の食の現場にはとてつもない異変が起きている。それは、中国の食文化や社会体制も関係する根深い問題であることが、本書を読み進めていくうちに分かってくる。

 薄い本だが、中国という国に興味があるなら読んでおいて損はない。中国の現状の一端、それもおそらくは中国政府があまり外国に知られたくないと思っているであろう部分を知ることができる。

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