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書評

松浦 晋也氏
2007年11月1日

「小さな政府」の落とし穴

「小さな政府」の落とし穴

井堀利宏著
日本経済新聞出版社
2007年8月発行
1890円(税込み)

 日本国の国家財政が危殆に瀕していると言われて久しい。ちょっとネットで「日本、借金、時計」で検索をかけると、すぐに日本の借金時計というようなページに行き着く。そこには800兆円を超えた日本国の借金が1秒ごとに増えていく様子がスクリプトで再現されている。その額は毎秒数十万円単位。この様子には目がクラクラする。

 財務省のページに行けば、「日本の財政を考える」というページが見つかる。税収と歳出の間に大きなギャップが存在するということを繰り返し強調している。毎年、歳出の3割を公債でまかなっていると。これらは子孫へ残す借金だ。

 一方で、日本は少子高齢化が今後ますます進むことが確定している。社会保障費、医療費は増加基調であり、老人国家がますます大きな予算を必要とすることは間違いない。

 どうすればいいのか、ということで本書を読んでみる。著者は東京大学大学院経済学研究科の教授。日本国の財政状態はどのように分析できるのか、借金漬け解消のための処方箋はどこにあるのかを、経済学者の立場から冷静に分析している。

 本書の副題は「痛みなき財政再建路線は危険だ」というもの。これでも分かるように、本書の主張は「財政再建に増税は不可欠である」というものだ。ただ増税の必要性を指摘するのみならず、どのような増税なら一般国民に受け入れられるのか、そしてどのような増税の形が望ましいかまで踏み込んで考察している。

 正直、増税はかなわない。稼いでも稼いでも国に持って行かれるという実感は如何ともし難い。だが、国が破産してしまったならばひどい目に遭うのも、日本国民である我々だ。

 必要なのは財政の再建。財政再建に痛みが伴うことが必須ならば、次に考えるべきは痛みを最小にする方策である。本書はそこまで踏み込んで、財政再建への道筋を考えている。

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