松浦 晋也氏
2007年6月29日
山本弘著
楽工社
2007年3月発行
1785円(税込み)
この書評欄ではこれまで、「テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか」「また「あるある大事典」にダマされた。」といった、放送業界の問題点を指摘した本を取り上げてきた。今回の「超能力番組を10倍楽しむ本」も、放送されるバラエティ番組の抱える問題点を主題にしている。取り上げるのは、最近なにかと問題の多いバラエティ番組のなかでも、超能力をテーマにした番組だ。
ただし、この本の著者のスタンスは上記2冊と大きく異なる。
「テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか」は、業界のシステムと収益構造を分析することで、放送業界が抱える問題点をあぶりだしていた。「また「あるある大事典」にダマされた。」は、放送内容を分析することで、番組がいかに多くのウソを公共財である電波を使って垂れ流していたかを暴露していた。
「超能力番組を10倍楽しむ本」は、番組内容の分析を通じて放送内容のウソをえぐり出すという点では「また「あるある大事典」にダマされた。」とよく似た内容だ。しかし、著者は「こんなにひどい番組を放送しています」と怒りの告発をしているのではない。「おバカな番組を徹底的に分析し、笑いのめして楽しもう」と提案している。
著者は「神は沈黙せず」「アイの物語」などの代表作を持つSF作家だ。と同時に、「太古、日本は世界の中心だった」とか「植物は人間の言葉がわかる」「アメリカは宇宙人と秘密裏に交流している」といった、常識はずれで無茶苦茶な内容の「トンデモ本」を笑いのめして楽しもうという趣旨の団体「と学会」の主催者でもある。
と学会会員が、その年に出版されたトンデモ本の中でも、もっとも荒唐無稽かつ奇天烈で笑える一冊を選んで表彰する「日本トンデモ本大賞」は、サブカルチャーの世界で根強いファンを持つイベントとなっている。
なお、2005年の日本トンデモ本大賞は、「アポロの月着陸は実はなかった」と主張した「人類の月面着陸は無かったろう論」(副島隆彦著、徳間書店)が受賞している。著者は、他のと学会会員と共著で「人類の月面着陸はあったんだ論」(楽工社)という本まで出版した。よく似た題名の本で副島本の内容を検証し、その矛盾を暴き立てたのである。実に念の入った笑い飛ばしようだといえるだろう。
「バカに対して本気で怒っても、相手と同じレベルに堕ちてしまう。バカは楽しみ、笑い飛ばすのが一番だ」というのが、一貫した著者のスタンスである。ただし笑い飛ばすにあたっての論証において、著者は一切、手を抜くことがない。相手が反論も言い逃れもできないように徹底的に分析し、「こんなバカなことやっている」「こんなインチキをやっている」と笑い飛ばすわけである。
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー
- 民主化を考えていた中国の指導者 (2008/10/20)
- 貧困層インタビューから見えてくる中国 (2008/09/08)
- 集落を捨てていく日本 (2008/07/29)
- 国境に秘められた深遠なドラマ (2008/06/27)
- 新型インフルを迎え撃つ「3種のワクチン」 (2008/05/02)

