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書評

松浦 晋也氏
2007年5月15日

「外注される戦争」

「外注される戦争」

菅原出著
草思社
2007年3月発行
1680円(税込み)

 本書の帯には「もはや米軍でさえ、自力では戦えない!」とある。その通りで、本書はアフガニスタンやイラクなどの戦場において今や必要不可欠な存在になりつつあるPMC(Private Military Company:民間軍事会社)の実態をまとめた本だ。

 ここで映画に出てくるような傭兵や、あるいはフランスなどが保有する外人部隊を思い浮かべると、認識を誤ることになる。戦争は、弾丸が飛び交う前線だけで行われるものではない。前線には、弾薬や燃料、整備用部品のみならず、兵士のための食料、衣料品など生活物資を補給し続けなくてはならない。戦闘で捕虜を得れば、彼らを留め置く収容所も必要だ。捕虜から情報を聞き出すためには専門の尋問官が必要となる。

 占領後の行政には文民の行政官が必要だが、テロリズムの横行により、行政関係者には護衛を付けなくてはならない。しかし占領軍には護衛を付ける余裕がない。

 PMCの社員は基本的に非戦闘要員だ。しかし銃を持ち自らを守り、ときには行政官などを護衛し、物資の輸送、基地の食事の調理、さらには捕虜の尋問に至るまでの、およそ最前線の戦闘以外の戦争に必要なすべての業務を、国家からの委託を受けて遂行するのである。

 最近、特に2004年に米国のPMC社員がイラクで虐殺されるという事件があってから、PMCの存在は急速にクローズアップされ、PMCを題材とした書籍も複数流通するようになった。それでも、日本ではまだ「イラクでは米国を初めとした多国籍軍が駐留しており、テロリストと戦っている」と思っている人は多いだろう。

 本書は、PMCの実態、歴史、将来展望をコンパクトにまとめており、その実態を知るのに好適な一冊である。一読して実感するのは、本書の帯にある通りの事実だ。戦争を始めるのは国家であるが、その遂行は既に国家のみではできなくなっているということである。

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