松浦 晋也氏
2007年4月9日
「赤ちゃんの値段」
高倉正樹著
講談社
2006年6月発行
1785円(税込み)
先日、熊本市が「赤ちゃんポスト」の設置を認可したというニュースが流れた。赤ちゃんポスト ―― 親が、育てられない赤ん坊を放置したり殺害したりするのを防ぐため、他人に顔を見られることなく「投函する」ことができる設備だ。ポストで保護された赤ん坊は公的施設の保護下に入ることになる。
今、なぜこのような設備が必要になったのか。その背景には「望まれず生まれてくる赤ん坊」が多数存在するという実態がある。
若すぎる恋愛、レイプ、不倫 ―― 原因はあれこれあるが、結果は一つ。関係する大人たちが「この子さえいなければ」と考える赤ん坊の誕生だ。特に若年層の妊娠中絶が近年増えていることから、十代の出産の多くがこの範疇に入るであろうことは容易に推測できる。
望まれざる赤ん坊がいる一方で、子どもが欲しくても授からなかった夫婦も存在する。需要と供給が存在すれば、人間の命を金銭に換算する相場が立ち上がる。そこに仲介者の「善意」が重なる時、「人身売買」という実態は隠蔽され、逆に「人助けの行為」が我々の前に立ち現れる。
善意には「本物の善意」もあれば「偽善」もある。しかしいずれにせよ、どう仕様もなく存在する「やましさ」は隠すことができない。
本書は読売新聞記者である著者が、なかなか実態が見えにくい「海外への養子斡旋業」を追ったルポルタージュだ。養子斡旋にあたっては時として多額の手数料が支払われる。毎年数十人規模の赤ん坊が、養子として海外に送られている。そして、真に驚いたことには、我々の政府の厚生労働省はこの現代の「人身売買」に対して、長年にわたり無能かつ無策だったのである。
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