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書評

社会の表面から隠蔽される知的障害者

 著者によると、平成18年版「障害者白書」に記載された日本の障害者数は、655万9000人。うち知的障害者は45万9000人。しかし、人類の知的障害者出生率は、2~3%。実際欧米の統計では、人口の2~2.5%が知的障害者だと報告されている。すると日本には240万~360万人の知的障害者がいることになる。

 著者の種明かしはこうだ。45万9000人とは障害者手帳の所持者の数なのだ。日本においては知的障害の8割を占める軽度の知的障害者の大部分は、障害者手帳を持っていないのである。なぜなら、障害者手帳を所有することが、社会からレッテルを貼られることを意味し、それだけ生活しにくくなるからだ。

 知的障害者などいて欲しくない。いない、見えない。そう考える我々の作り出した社会の姿だ。

 それら表面上は障害者ではない人々に、例えば家庭崩壊や失業、その他の不幸が複数重なると、「累犯障害者」予備軍が生まれることになる。

 実のところ、わたしにはこの問題を偉そうに論ずる資格はない。学生の時、ボランティアでダウン症の子供の面倒を見たことがある。その時に感じた「こんなに神経をすり減らされる人と付き合うのはごめんだ」という感覚は、今もわたしの内側にある。

 だが、いくらわたしが見たくないと思っても、彼らがいなくなるわけでも、生まれてこなくなるわけでもない。遺伝子は平等だから、いつ何時、身内に生まれた赤ん坊が障害者だったということが起きてもおかしくはない。

 思い出せば、小学生のころ、40人ほどのクラスに1人ぐらい、そんな子がいたものだ。人口の2~3%という数字からすれば、別に不思議なことではない。

 子供は残酷だから「あいつバカなんだぜ」と大きな声で言ってみたりもしたものだが、同時に大した違和感もなく遊んだりもした。

 今、文章を書き、ビジネス社会に生きるわたしの周囲に、彼らの姿はない。明らかに社会は階層化されており、今わたしが働いている階層から、知的障害者は排除され、隠蔽されている。

 前回取り上げた「階級社会」では、収入格差による社会の階層化に焦点が当てられていた。本書を読むと、格差社会を考えるにあたってもう一つの物差し、つまり隠蔽されている軽度知的障害者という物差しが必要であることが見えてくる。

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