松浦 晋也氏
2006年10月27日
橋本健二著
講談社
2006年9月発行
1575円(税込み)
小泉内閣の5年間で、日本社会は持てる者と持たざる者の階級化が進んだ、とよく言われる。出版の世界でも階級社会に関する本が目立つようになった。
その嚆矢となったのは、「希望格差社会」(山田昌弘著・筑摩書房、2004年11月発行)だろう。この本は、「勝ち組」「負け組」の格差が拡大していき、未来への希望を奪われた階層が出現しつつあると指摘した。そして「下流社会」(三浦展著・光文社新書、2005年9月発行)が新書で出版されて、「上流」に対置される「下流」という言葉が一気に一般化した。
確かにわたしは生活実感として、日本社会が二極分化しているという印象を持っている。おそらく多くの人も似たような感触を抱いていることだろう。
しかし、印象と実態は乖離していることがままある。本当に日本社会が二極分化しているかどうかは、適切な社会調査によって得られた統計的指標で論じなくてはならない。
本書は、社会統計と、小説・マンガ・世相風俗といった社会分析の両面から、日本社会の現状をあぶり出そうとした本だ。特に、数字として日本社会の二極分化を示そうという意志が本書の全体を貫いている。統計の基礎として、「SSM調査」と「JGSS調査」という2種類の社会調査のデータを用い、独自の手法で解析することによって、日本社会における階級を分析していく。
本書冒頭には、雑誌に掲載された「階級」に関する記事の統計が掲載されている。1980年代には少なかった記事は、90年代に入ると一気に約3倍に増加して90年代を通じて一定水準を保ち続け、2000年代に入るとまたも急速に増加し、現在も増え続けている。その内容も、1990年代前半の増加は、バブル経済を受けて「リッチさを楽しむための記事」が主軸だったのに対して、1990年代後半からは中流階級没落を予言する記事が増え始める。そして2000年代になると「階級社会」と言う言葉が、雑誌で一気に増殖を始めるのだ。
著者はさらに、社会における格差を示すジニ係数という指標の変化を示す。ジニ係数は1980年ころから拡大に転じ、2001年には1920年(大正9年)と同じ程度にまでなる。ジニ係数を信ずるならば、現代は大正9年、すなわち第一次世界大戦とシベリア出兵で多数の戦争成金が生まれ、その一方で米騒動が起きた時代と同程度にまで格差が拡大しているというわけだ。
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