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書評

米国は日本の未来を先取りしているのか

 本書が提示するのは、レーガノミックス以降、規制緩和が進んで競争が激化した米国で、単純労働の現場がどうなったかである。答えは単純だ。「生活が苦しくなった」。

 最終章で著者は自らの体験と統計資料をつき合わせて、米国の低賃金労働者が置かれている状況を明らかにしていく。米国の労働者の60%が時給14ドル(1640円)以下で働いている。賃金上昇率は、最低賃金層が一番低く抑えられている。緊急の食料援助を求める成人の67%がなんらかの意味で職に就いている――などなど。

 富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなり、しかもその構図はますます見えにくくなっている。

 この構図は海の向こうの他人事ではないだろう。小泉内閣が5年間で実施した政策は、基本的に米国の政策を踏襲したものだった。本書に描かれた1998年から2000年にかけての米国の状況は、おそらく今後の日本の状況と重なってくるはずである。

 「貧しくない人々にとって、貧困が激しい苦痛であるというのは、なかなか理解しにくいことだ。辛口コーンチップスやホットドッグだけのランチでは、勤務時間が終わる前に失神しそうになる。住む『家』も乗用車かヴァンだ。病気や怪我は、歯を食いしばって耐え、『負けずに頑張らなくては』ならない。病気欠勤しても手当も健康保険もなく、一日分の給料がもらえないということは、即、翌日の食料がないことを意味するからだ」(本書282ページ)。

 日本には国民健康保険制度がある?
 様々な公的支援がある?
 米国とは社会環境が違う?

 しかし、過去5年間、我々が選んだ内閣は、その足元を崩し続けてきた。優先したのは経済成長だった。「改革なくして成長なし」の改革は、「痛みを伴う改革」だった。同じ痛みを全ての人に分かち合うなら、低収入層を含む社会的弱者がより大きな痛みを感じることになる。

 そして社会保険庁の不正に代表されるように、長い期間、我々の官僚システムは、我々の生活の足元をせっせと掘り崩してきた。

 残念ながら、このまま行けば、本書の描写は、日本の未来の先取りしたものと評価されるようになるだろう。

 「自分は高収入だから大丈夫」という問題ではない。低収入者層もまた日本国民であり、しかも国民の多数を占める。それらの人々が、収入と自尊心を失うということは、長期的に国の活力を削ぐことにつながるのだ。

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