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書評

日本人は“プロジェクトX”から抜け出せないのか

 こんなことを書くのは、NHKの「プロジェクトX」という番組が高視聴率を獲得し、少なくともNHKの経営から見れば成功作となったからである。

 「プロジェクトX」成功の原因は、プロジェクトを描くフォーマットにあった。つらいプロジェクト、成功への道は見えない。そこで「男たちの逆転をかけたドラマ」(だいたい番組開始35~40分ぐらいだったか。「水戸黄門」を想起させる)が始まって、めでたくプロジェクトはうまくいく。

 多くの人々がこのパターンにはまり、日本PTA全国協議会は「プロジェクトX」を2003、2004年度の「子供に見せたい番組」に選定するまでになった。

 少し考えれば、この構図が欺瞞(ぎまん)であることはすぐ分かる。「男たちの逆転をかけたドラマ」を仕掛けなければならないという時点で、すでにプロジェクト管理は失敗しているのだから。

 プロジェクト管理の失敗を、現場の過重労働でかろうじてカバーするというのは、決して誇るべきことではない。むしろ失敗事例として研究すべき対象だろう。では、そんな事例に、なぜ我々は涙してしまったのだろうか。そこには「本当に意味のある労働」と、「なんだかよく分からないプロジェクトの神に捧げる供物としての重労働」を混同する、我々の心性があったのではないか。

 「プロジェクトX」は、「プロジェクトX展」という展示会で登場企業から協賛金を集めたことが露見したり、番組に登場した相手から「事実と違う」と抗議を受けたりして、放映を終了した。「男たちの逆転をかけたドラマ」というフォーマットで切り取れる事例がそうそうあるはずもなく、最後は事実の偽造に走ったわけだ。それは事実に基づく番組として許される行為ではなかった。

 だが同時に、NHKの番組制作班に対して、視聴率という数字を通じて、「もっと見せろ。もっと感動させろ。もっと涙を流させろ」と圧力をかけていたのは、ほかならぬ我々であったことを忘れてはならないだろう。

 なぜ「失敗しかけたデスマーチを男たちが救う」というフォーマットに感動し涙したのか。番組は終了したが、我々は忘れることなく考えていくことが必要だろう。なにしろ、9 to 5 の勤務を維持しても成功するのが本当に優れたプロジェクト管理というものなのだから。

 この「デスマーチ」という書籍、プロジェクト管理のマニュアル本として使える体裁をしていながら、その問いかける課題は意外なほど重い。

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