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書評

プロジェクトにかかわることはデスマーチにかかわること

 著者ヨードンの思考を特徴付けるのは、デスマーチに対する徹底した考察である。第1章では、デスマーチの定義とその発生理由、そしてデスマーチに参加する者の動機を分析、分類する。第2章ではデスマーチを巡るメーカー上層部や顧客との政治的な駆け引きを分析し、第3章ではデスマーチを巡る様々な交渉を分析・分類――。つまり、全編にわたって、まず分析、次いで分類、そして考察を繰り返し、曖昧な部分が皆無なほどに、デスマーチという現象を論理的に解剖し尽くしている。

 例えばデスマーチは「プロジェクトのパラメーターが正常値の50%以上超過したもの」と明快に定義される。納期、人員、予算などが見積もりに対して半分しか与えられなかったり、要求性能が通常の2倍だったりすると、それはデスマーチプロジェクトというわけだ。さらに著者はもう一つ辛らつな定義を行う。すなわち「失敗する確率が50%以上のプロジェクト」と。

 さらにデスマーチの発生理由については「政治」「営業部門、経営陣、プロジェクトマネジャーの天真爛漫(らんまん)な将来展望」「若者のカワイイ楽観主義」「ベンチャー企業立ち上げ時の楽観主義」「海兵隊方式:本物のプログラマーは寝ずに働く!」「市場の国際化による競争激化」「新技術による競争激化」「予期せぬ公的規制」「予測不能の事件、事故」――と分類して、解説を加えていく。

 本書は誰にでも分かる事実と用語を駆使して、デスマーチという現象を分析していく。このような態度はあまり日本人には見られないものだ。

 米国では職務に関して詳細なマニュアルが作成されることが珍しくない。どんな文化的背景を持った者でも職務を遂行できるようにするためだ。本書の書き方は、そのような米国流のマニュアルに近い。「どのような読者に対してもデスマーチという現象を理解させよう」というわけである。

 だから、本書はプロジェクトマネジャーのみならず、企業の経営陣から現場作業者に至るまで、プロジェクトと呼びうる仕事にかかわる人なら誰にでもそれなりに役立つ内容となっている。あなたが現場作業者なら、本書を読むことで、仕事は楽にならないまでも、少なくとも上司が何を考えているか理解できるようになるだろう。また、プロジェクトを統括する経営者ならば、日々のプロジェクトマネジャーの報告の裏側にあるものをある程度正確に見通すことができるようになるだろう。

 なにしろ、本書によれば、プロジェクトというものはすべからくデスマーチなのだから。

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