排出権取引と国際炭素税はどちらがよいか?
■「2050年半減」めぐるEUの思惑
この春、サッチャー政権当時の財務大臣であるナイジェル・ローソンが著した『An appeal to reason, a cool look at Global Warming』(理性に訴える……冷静に見た温暖化問題)は、温暖化問題について各種文献を基に検証を加え、理性的な議論を訴える内容となっている。前編では、温暖化の検証からIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の問題点へと話題を拡げてきたが、今回は「ポスト京都」をにらんだ削減策のあるべき姿についてローソンの考えを紹介する。
ローソンは、温暖化は地球規模の問題なので地球規模の対策が必須だと考える。特に、中国やインドなど急激な成長を続ける主要途上国の協力は不可欠である。中国などは、毎年の排出増加量が英国全体の排出量を超えているのだから、なおさらである。しかし、中国やインドの首脳の発言から推察する限り、経済成長抑制につながる国全体の排出上限値を受け入れることはありえない。こうした状況では、二酸化炭素(CO2)濃度の上昇を抑える国際条約締結の見通しは暗い。
ここでローソンは、京都議定書に関する独自の見方を展開する。京都議定書は先進国だけが義務を負ううえ、たとえ目標を達成しても、特段の対策を取らなかった場合(BAU)から、たった0.1℃気温を下げる程度の緩い内容であった。にもかかわらず、カナダは言うに及ばずEU(欧州連合)や日本も目標達成が難しくなっている状況である。この例外は、ホットエアを持つロシアだけである。
こうした状況にありながら、ドイツのメルケル首相は英国の支持を得て2007年6月のハイリゲンダムサミットで、2050年までに地球規模の排出量半減(1990年比)と2℃目標(工業化以後の気温上昇を2℃以内に抑えること)を提唱した。しかし、1990年以降、中国とインドの排出量が、すでに2倍になっているなかで、どうしてこのような提案が出たのか理解に苦しむとしている。
ローソンの解釈では、これは米国を孤立させ譲歩させるためであったが、孤立したのはEUだった。日本と米国は、法的拘束力を持つG8(先進8カ国)としての単一の排出上限規制に反対し、ロシアとカナダがこれを支持した。最終的には「半減目標を真剣に検討する」という、曖昧な表現になった。
次の舞台は、2007年12月にインドネシアのバリ島で開催された国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)である。ここでドイツや英国を先頭に、EUは、先進国が2020年までに25~40%削減する合意をめざした。しかし、米国と中国、インドが反対し、日本とロシア、カナダ、オーストラリアは米国を支持した。ここで再び孤立したのはEUで、結局、法的拘束力のある削減目標は決まらなかった。
米国での政権交代に期待する声はあるが、何の根拠もない。これが現状である。貧しい国への適応策の援助や技術移転の条約はいずれ合意されるだろうが、京都議定書スタイルの条約が、もはや合意を得られないことは明らかだ。これがローソンの解釈である。
詳しくは、こちら「bp SPECIAL 地球環境問題―新たなる挑戦― ECOマネジメント」サイトでご覧になれます。
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