第3回
番組コンテンツの流動化
実現するための条件とは
(佐々木俊尚)
「通信と放送の融合」という言葉は、大手ネット企業であるライブドアや楽天が2005年前後、放送局にさかんに触手を伸ばそうとしたころから一般に流通するようになった。楽天はいまもTBSに対する資本提携構想を崩しておらず、最近の報道では持ち株比率をさらに高め、役員の送り込みを図っているという。
楽天が2005年秋、TBSに対して電撃的な統合提案を申し入れた際、100ページに余る提案文を作成していた。当時、その内容をすっぱ抜いた読売新聞によれば、その中身は次のようなものだった。
<放送と通信を融合させた具体的な事業としては、(1)楽天グループ3000万会員の基盤を活用して「見たい番組」情報を提供、(2)TBSの番組や広告を視聴することで、買い物に利用できる楽天ポイントを付与、(3)ブログを活用した視聴者同士のコミュニケーションの拡大――などを挙げ、「視聴者個人の好みに合わせ、番組と広告を統合的に組み合わせる」ことによって、相乗効果を図るモデルを打ち出した。これらの展開には、大手広告会社の電通の協力が不可欠であることも明記した>(2005年10月20日・読売新聞東京本社版朝刊)
この提案の中身は、ライブドアの堀江貴文前社長がフジサンケイグループに挑んだ際、「テレビの番組で俳優の着ている服が、すぐにネットで買える」といったようなビジネスモデルを提案していたのと似通っている。ひとことで言えばありきたりであり、買収を仕掛けられた放送局の側が「そんなことはテレビ局がもうずっと前からやっている」と反発したのも当然だった。実のところ、楽天やライブドアが狙ったのは、放送局が擁している膨大な数の視聴者を、自社のサービスに取り込みたかっただけであり、それは「通信と放送の融合」といえるようなものではなかった。
では、本当の「通信と放送の融合」とは、いったいどのようなものなのだろうか。
それは端的に言えば、放送局の持っている番組コンテンツ(動画コンテンツ)がオープン化され、流動性が高まっていくことである。現在は、日本のテレビの人気番組はいっさいオープンになっていない。ドラマであれバラエティであれ、人気番組は地上波放送以外ではいっさい放映されない。いったん放映を見逃してしまえば、再放送を期待するか、あるいはかなりの時間が経ってからDVDにパッケージ化されて販売されるのを待つしかない。
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