第1回
太平の眠りを覚ますYouTube
(佐々木俊尚)
日本のテレビ番組が大量にアップロードされている米YouTubeの動画投稿サイトに対し、日本のテレビ局は神経を尖(とが)らせている。番組コンテンツがオープンになってしまうと、テレビCMを見てもらえなくなり、テレビ局のビジネスモデルが崩壊してしまう——。テレビの世界には、そのような危機感が広がっているからだ。
しかし技術とサービスの進歩は、このオープンへと向かう流れを奔流のように噴出させつつある。YouTubeだけではないのだ。合法的に番組コンテンツをオープンにしてしまう方法はいまや無数に出現しつつあり、テレビ局といえどもその流れはもう押しとどめられない。
この連載では、その「無数の流れ」を紹介していくことによって、動画コンテンツの利用形態がどう変わっていくのか。そしてその利用スタイルのオープン化によって、視聴者や広告主にどのようなメリット(と、あるいはデメリット)が待ち受けているのかを追い求めてみたい。
提携か拒否か、「YouTube対策」で揺れる日米の放送局
YouTubeと日本の著作権団体との対立は、ますます鮮明になってきている。
2006年10月には、民放とNHK、日本音楽著作権協会(JASRAC)などが総計3万にも上る番組コンテンツを、YouTubeから削除するよう同社に要請。さらに12月には、番組コンテンツがアップロードされない防止策を採るよう、書面で要請した。そして2007年2月には、とうとうYouTubeの最高幹部らが来日し、テレビ局などの著作権団体と初会談を持つ事態にまで発展した。
会談後の記者会見で、日本側からは「紳士的な対応をしてくれた」(日本民間放送連盟・植井理行IPR専門部会委員)などと交渉を評価する声も上がったが、実態としてはほとんど成果がなかったようだ。ある民放連関係者は匿名を条件に、次のように語っている。
「日本の著作権団体が本当に求めているのは、アップロードするユーザーの実名を捕捉することと、アップロードの際に自動的に著作権違反のコンテンツをはじくようなシステムの導入。しかしこうした部分は、YouTube側にはまったく受け入れられなかった」。
YouTubeが著作権団体に対して強気の姿勢を崩さないのには、理由がある。米国では今や、YouTubeを脅威と見なすのではなく、ビジネスパートナーとして提携しようとする動きが映画・テレビ業界に加速度的に広がりつつあるからである。たとえば3大テレビ・ネットワークの一角のCBSは、2006年10月にYouTube上で「CBS Brand Channel」をスタートさせた(表)。CBSが持っているバラエティーやスポーツなどの番組コンテンツをYouTube上で合法的に配信するサービスであり、ITproの記事によれば、開始から1カ月で合計2920万回も視聴され、利用者数は2万人に上ったという。またテレビ放送そのものの視聴者も増えた。記事には、こうある。
CBSによると,YouTubeでの公開を始めてからテレビ放送の視聴者も増えたという。具体的には「Late Show with David Letterman」が20万人増(CBS Brand Channel開始前に比べ5%増)、「The Late Late Show with Craig Ferguson」が10万人増(同7%増)だった。
YouTubeはテレビ局も無視できないほどの、大きな影響力を持ち始めているのである。
(編集部注:表のデータは、2006年11月にYouTubeが発表した資料から抜粋。CBSと提携後1カ月間のデータから視聴回数の多かった上位15サイトをランキングしたもの。各コンテンツ名へのリンク先もYouTubeの発表資料から記載した。YouTubeの発表資料はこちら)
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