ネット・エコノミー解体新書

第4回アマゾンと、ロングテールに関する“大きな勘違い”

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2006/9/7
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「金持ちロングテール」と「貧乏ロングテール」

「アマゾンのようなロングテール」をやろうと思ったら、売上高が数千億円以上といった、その市場での「ガリバー」を目指すとともに、数年間、ものすごい赤字を計上しても投資家を説得できるだけの「インベスター・リレーション力」が必要である。数十億円、数百億円といった程度の物販売上を目指して、「アマゾン的に」ロングテールな領域に踏み込むことは、まったくお勧めできない。

数十億円程度までの物販ビジネスを志向するなら、「ほかが取り扱っていない独自性の高い商品」を扱うべきだろう。それは、ロングテールといえばロングテールではあるが、基本的には大昔から存在する「ニッチ」戦略に過ぎない。しかも、ネットなので、既存のビジネス以上に、その「ニッチ」の中で圧倒的な存在感を確立しない限り利益の確保は難しいだろう。

以上、連載の第2回、第3回で紹介したグーグルやイーベイと、アマゾンのビジネスモデルがまったく違うことがおわかりいただけたかと思う。ベストセラーになった「金持ち父さん貧乏父さん」になぞらえれば、グーグルやイーベイは、コンピュータやネットを使うことで、相対的に自分の力はあまり使わず、小さな企業や個人の力をうまく活用していることで自動的にキャッシュがポケットに入ってくる「金持ちロングテール」である。

それに対して、アマゾンは「自分で」仕入れ物流から販売まで行っており、アフィリエイトやレビューなど、ネットならではの手法を駆使してはいるものの、グーグルやイーベイに比べれば、相対的に消費者の力を利用する割合が小さく、自分で努力しなければならない割合は大きい。

むしろ前ページの表1に示したセブン-イレブン・ジャパンのほうが、売れ筋情報や物流の情報処理を生かす「ネット企業」として、個人や小規模企業のフランチャイジーの力をうまく活用しており、アマゾンよりもよほどグーグルやイーベイのビジネスモデルに近いように見える。

繰り返すが、「死の谷」を渡りきったアマゾンはすごいし、筆者自身も、最近はアマゾン以外で本を買うことはほとんどなくなった。こんな便利なサービスはないし、アマゾンが世界の人々に与えた影響は計り知れない。

ただ、そのイメージが強いからといって、「Web2.0」や「ロングテール」という「バズワード」に踊らされてはいけない。財務構造を考えずに効率の悪いビジネスの泥沼に踏み込むと、「アマゾン」になるつもりが、「貧乏ロングテール」のワナに陥ってしまう危険性が高いので、十分、ご注意を。

磯崎 哲也

公認会計士でアルファブロガー

長銀総合研究所に就職後,ベンチャー企業のCFOを経て2001年7月に独立し,磯崎哲也事務所を開業。現在,カブドットコム証券の社外取締役,ミクシィの社外監査役なども務める。ブログ「isologue」(イソログ)を執筆中。

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