第4回アマゾンと、ロングテールに関する“大きな勘違い”
ロングテールは「もうかる」のか?
まず、アマゾンの損益計算書を、他の主要ネット企業と比較した図2をご覧いただきたい。1ドル=115円として換算した。
アマゾンはグーグルやイーベイよりも売り上げは大きいが、粗利率はたったの24.0%。ネット以前の通販は、健康器具、健康食品、下着など、粗利率が5割とか7割ある商品でしか成立しえなかった。2割ちょっとの粗利の商品でも「通販」できるようになったというのは、確かにネットやIT技術の画期的な成果だとも言える。
ちなみに、日本で書籍や文具を扱う丸善の2006年3月期の連結売上高は834億円。アマゾンよりは1けた小さいが、粗利率は23.9%でアマゾンとほぼ一緒だ。
図3のように、丸善の粗利率とアマゾンの連結粗利率を比べると丸善の方がずっとアマゾンを上回ってきた。日本にアマゾンが上陸したのは2000年11月からだ。それ以降、アマゾンの粗利率は改善しているので、日本の書籍の再販制度がアマゾンの連結の粗利率の向上に寄与したのかとも思ったが、そうではなさそうだ。
セグメント情報をもとに、利益率を地域別に分解してみると、図4のとおり。むしろ、アマゾンの中で粗利率の高いのは北米の事業であり、北米外の事業は非常に利益率が低いことがわかる。
セグメント情報にはこれ以上の細かいデータは出ていない。しかし、北米だけでも5000億円以上の売り上げを計上するようになったことで、書籍やDVDを中心とした市場で圧倒的な「バイイング・パワー」を持つに至ったことが大きいと考えられる。
常識的に考えれば、ロングテールで「少量多品種」になれば、効率は悪くなる。つまり、「ロングテールをやればもうかる」のではなく、「絶対的地位の規模を獲得すれば、ロングテール“でも”利益が出せるようになる」と見るのが正しいのではないか。
また、書籍などのマーケットは、日本でも米国でも「縮小しつつある市場」であるという点にも着目する必要がある。右下がりのマーケットでは「バラ色の未来」は描きにくいから、参入したがる者は限られる。
現在のアマゾンが得ているのは、ロングテールによる「新しいタイプの利益」というよりも、オールドエコノミーでも見られる、成熟・衰退市場で絶対的地位を獲得することによる「残存者利益」であり、「古典的なタイプの利益」なのではないだろうか。

図2●アマゾンとグーグルおよびイーベイの連結損益計算書の比較
各社の10-K(年次報告書)より磯崎哲也事務所が作成。1ドル=115円として換算。

図3●アマゾンと丸善の粗利率の比較
Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。

図4●アマゾンの地域別の粗利率
全体の粗利率および丸善の粗利率と比較。Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。
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