ネット・エコノミー解体新書

第4回アマゾンと、ロングテールに関する“大きな勘違い”

コメント
2006/9/7
前のページへ1ページへ3ページへ4ページへ次のページへ

ロングテールは「もうかる」のか?

まず、アマゾンの損益計算書を、他の主要ネット企業と比較した図2をご覧いただきたい。1ドル=115円として換算した。

アマゾンはグーグルやイーベイよりも売り上げは大きいが、粗利率はたったの24.0%。ネット以前の通販は、健康器具、健康食品、下着など、粗利率が5割とか7割ある商品でしか成立しえなかった。2割ちょっとの粗利の商品でも「通販」できるようになったというのは、確かにネットやIT技術の画期的な成果だとも言える。

ちなみに、日本で書籍や文具を扱う丸善の2006年3月期の連結売上高は834億円。アマゾンよりは1けた小さいが、粗利率は23.9%でアマゾンとほぼ一緒だ。

図3のように、丸善の粗利率とアマゾンの連結粗利率を比べると丸善の方がずっとアマゾンを上回ってきた。日本にアマゾンが上陸したのは2000年11月からだ。それ以降、アマゾンの粗利率は改善しているので、日本の書籍の再販制度がアマゾンの連結の粗利率の向上に寄与したのかとも思ったが、そうではなさそうだ。

セグメント情報をもとに、利益率を地域別に分解してみると、図4のとおり。むしろ、アマゾンの中で粗利率の高いのは北米の事業であり、北米外の事業は非常に利益率が低いことがわかる。

セグメント情報にはこれ以上の細かいデータは出ていない。しかし、北米だけでも5000億円以上の売り上げを計上するようになったことで、書籍やDVDを中心とした市場で圧倒的な「バイイング・パワー」を持つに至ったことが大きいと考えられる。

常識的に考えれば、ロングテールで「少量多品種」になれば、効率は悪くなる。つまり、「ロングテールをやればもうかる」のではなく、「絶対的地位の規模を獲得すれば、ロングテール“でも”利益が出せるようになる」と見るのが正しいのではないか。

また、書籍などのマーケットは、日本でも米国でも「縮小しつつある市場」であるという点にも着目する必要がある。右下がりのマーケットでは「バラ色の未来」は描きにくいから、参入したがる者は限られる。

現在のアマゾンが得ているのは、ロングテールによる「新しいタイプの利益」というよりも、オールドエコノミーでも見られる、成熟・衰退市場で絶対的地位を獲得することによる「残存者利益」であり、「古典的なタイプの利益」なのではないだろうか。

図2●アマゾンとグーグルおよびイーベイの連結損益計算書の比較 各社の10-K(年次報告書)より磯崎哲也事務所が作成。1ドル=115円として換算。

図2●アマゾンとグーグルおよびイーベイの連結損益計算書の比較
各社の10-K(年次報告書)より磯崎哲也事務所が作成。1ドル=115円として換算。

図3●アマゾンと丸善の粗利率の比較 Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。

図3●アマゾンと丸善の粗利率の比較
Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。

図4●アマゾンの地域別の粗利率 全体の粗利率および丸善の粗利率と比較。Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。

図4●アマゾンの地域別の粗利率
全体の粗利率および丸善の粗利率と比較。Amazon.com, Inc.の10-Kおよび丸善の有価証券報告書より磯崎哲也事務所が作成。

next: 「死の谷」を越える意思があるか?

前のページへ1ページへ3ページへ4ページへ次のページへ

あなたのご意見をお聞かせください

お知らせ このサイトは移転しました。最新情報はNETMarketing Onlineで提供中!
日経BPからのおしらせ
  • 新サイトへの移行のお知らせ
    「NETMarketing Online」がスタート!

    この「NETMarketing」サイトは、新たに「NETMarketing Online」として再スタートしました。新しいサイトはこちらになります。 10月25日創刊の専門誌「日経ネットマーケティング」の読者限定サイト「NETMarketing Premium」も開設。今後の情報提供は新サイトで行っていきます。引き続きご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
  • ネットとケータイで“売れる”仕組みを作る
    月刊専門誌「日経ネットマーケティング」
    10月25日 創刊!

    創刊記念 特別キャンペーン実施中!

    日経BP社は、企業の販売・営業、広告・宣伝を担う方々を対象にした月刊専門誌「日経ネットマーケティング」を10月25日に創刊します。実務に役立つ情報をWebサイトや年2回の「NET Marketing Forum」などと連携してご提供。ご購読は、上記ページからお申し込みください。

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る