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Q.全世界でサービスを提供するISPは国内法の影響を受けるのか?(2006/01/18 鼎 博之 弁護士)
第18問:インターネットに国境はないといわれますが、ヤフーのような世界的なインターネットサービスプロバイダーに対しては、言論の自由のような重要な権利が各国の国内法によってどのような影響を受けるのでしょうか。 A. 他国の国内法に触れる場合にはトラブルに巻き込まれる可能性も 世界的にサービスを提供するインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)が、国内法にどのような影響を受けるのか。この問題についてヤフーとフランスの人権団体との間で、6年越しで争われた裁判について、2006年1月12日、米国第9巡回区連邦高等裁判所が判決を出した。今回はこの問題を紹介する。 仏裁判所が米国のヤフーに仮処分命令Yahoo!Inc.は、米国デラウエア州法によって設立された法人であり、カリフォルニア州サンタクララに本店を有する米国法人である。ヤフーは、Yahoo! UKやYahoo! Franceなどの海外子会社を有し、フランスでは、fr.yahoo.comのサイトでフランス語のサイトを運営し、そのサービスには、検索エンジン、e-mail、掲示板、ショッピング、チャットルーム、オークションサイトなどが含まれている。 ヤフーの米国でのサイトは、英語で記載され、主に米国のユーザーを対象にしている。他方、fr.yahoo.comは、フランス語で記載され、フランスの国内ユーザーをターゲットにしている。だが、米国のユーザーが、fr.yahoo.comにアクセスすることも、フランスのユーザーが、yahoo.comの英語のサイトにアクセスすることも可能である。 このヤフーのサイトには、ユーザーによる、ヒットラーの著書「わが闘争」の文章や「ホロコースト(ユダヤ人に対する大量殺戮)の存在を否定する言論」などが掲載され、さらに、ヤフーオークションには、ナチの旗、ヒットラー時代のコイン、切手その他ナチズムに関係する物品がオークション対象物品としてアップロードされていた。 フランスでは、ナチズムの広報またはこれに関連する物品の販売を法律で禁止している。フランスの人権団体は、2000年4月10日、ヤフーに対して、上記フランス法で禁止された言論やこれに関する物品をアップロードしているヤフーサイトの掲載禁止を求めてフランスの裁判所に提訴した。 2000年5月22日、同裁判所はこの訴えを認め、フランス在住者がyahoo.comを通じて、上記ナチズムの賞賛やナチの犯罪を否定する言論にアクセスすることができないよう、あるいは上記のナチに関する物品を掲載したオークションサイトにアクセスできないよう、あらゆる合理的な処置をヤフーが取らない限り、1日あたり10万ユーロ(約1400万円)のペナルティを支払えという仮処分命令を出した。 ヤフーは技術的問題点から仏裁判所の命令に提訴ヤフーは、上記のフランスの裁判所の命令を遵守することは、技術的に不可能であると異議を唱えた。しかし、裁判所は、約70%のフランス国内のPCユーザーは特定可能であり、現に、ヤフーは、そのようなフランス在住のユーザーに対して、フランス語のバナー広告を掲載しているという専門家の意見書を入手した。 さらに、ヤフーオークションについては、ユーザーの国籍を質問することにより、さらに20%のユーザーの特定が可能であり、合わせて、90%のユーザーのIPアドレスの地域と国籍の特定が可能であることから、フランス在住者の上記サイトへのアクセスを制限することは、技術的に可能であるとの専門家の意見書も提出された。 このような証拠を基に、フランスの裁判所は、2000年11月20日、先の5月22日の仮処分命令を再度確認した。この命令は、3カ月以内にヤフーが従わない場合には、1日あたり10万フラン(今回はフラン、約150万円)のペナルティを支払うよう内容も含んでいた。 2000年12月21日、ヤフーは、上記フランスの裁判所の仮処分命令は、米国内では強制執行力がないという宣言判決を求めて、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。 ヤフーは、インターネットサイトについて、ある一定の国の住民(この場合フランス在住者)からのアクセスを制限することは、技術的に不可能であること、もし、フランスの法律で定められた禁制品に対するアクセスを禁じようとすれば、Yahoo.comサイトにおけるナチズムの広告宣伝物の掲載を一切禁止するしかないが、これは、表現の自由の保障という連邦憲法修正第1条に違反すると主張した。 これに対して、カリフォルニアの連邦地方裁判所は、2001年11月7日、ヤフーの訴えを認め、上記のフランス裁判所の決定は米国内で執行力を有しないと判断した。この判決は、表現の自由という憲法上の権利を理由として、フランス法の適用を排除したもので、妥当な解釈を示しているといえる。 ヤフーは、その頃自主的に、オークションやユーザー個人サイトにおいて、人種その他の理由に基づいて、憎悪や暴力を推進する団体を賞賛する内容の記事(ヘイトスピーチ)、またはこれらを象徴する物品の掲載を禁止するユーザーポリシーを採用し、上記フランス裁判所の決定を事実上遵守する処置がとられた。next:大法廷の審理は仏人権団体に対する裁判管轄を認める…
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