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Q.「のまネコ」問題で話題のモナーの著作権の行方は?

モナーの著作物を独占することは誰もできない

前に電車男の著作権の説明の際にも記載したが、掲示板における書き込みは、匿名の作者が様々なコメントを書き込み、それぞれの書き込みが集まって、全体として一つの作品が出来上がっている。このため、そもそも電車男が単行本になる前は、全くの多数のネットユーザーのコメント集であり、ネット参加者がそれぞれ各人各様に集って書き込んだものである。いわばお祭り広場における発言のようなものである。

もちろん、原作者として、モナーの著作物を独占することは誰もできないものであることは納得できるであろう。もともとモナーの原作者が不明であり、しかも、モナーのように各人各様の表現方法が存在している場合、それほど創作物としての特徴がないのであるから、原作者(と称する者)が著作権を主張してきたとしても、堂々と対抗すればいいのではないか。

わた氏も含め、日本人は余りにも権利の主張を自粛しすぎるのではないかという気がする。まして、エイベックスの社員に対する殺人予告までなされたという事態は、ネットの匿名性における悪しき部分が出てしまったものであり、いずれの立場の者も堂々とネット上で論戦を戦わせてもらいたかったものである。そのような論争が自由になされることこそが、ネットにおける表現の自由と草の根民主主義の発展につながると思う。

商標登録によってもモナーの使用は制限されない

「のまネコ」と「モナー」はまったく別物という立場のエイベックスでは、商標登録出願することは海賊版に対抗する上でも「ごく普通」のことだった。これは、企業の論理からすれば、あるキャラクターグッズや楽曲を販売する場合、商標登録をするのは、企業防衛上は当然の措置である。

もし、同様の商標を他人が登録してしまえば、今度はその商標権者から商品の販売差し止めや、損害賠償請求を受ける可能性がある。このように、なんらの商品も製造していない者が、いわば不当な権利行使のために商標を登録するということは世の中には沢山存在することである。

このような例は、過去に「阪神優勝」という商標を登録していた人がいたことから、阪神球団がこの商標登録者である衣料品販売業者に対して商標権の譲渡交渉をしたが、決裂したという有名な事件からも明らかである。

エイベックスへの批判の中で、のまネコは、そもそもアスキーアート文化に影響されたマイアヒ・フラッシュから生まれたもので、商標登録などによってモナーなどのアスキーアートが自由に使用できなくなるのではないかとの指摘もあった。しかし、この指摘は正しくない。

商標登録は、自己の商品と他人の商品を識別するためのもので、商品につけてその商品の製造者や販売者の出所を表示する機能を有するものである。日本では、他人よりも先に登録したものを保護する先登録主義を採用している。

原作者が明確でないキャラクター商品販売に教訓

一方、著作権は、商標とは異なり、権利の取得に登録などのなんらの要件を要求していない「無方式主義」をとっている。著作物を創造した人が創造した時点において、権利を有するものであり、商標のように登録するなどの手続きはなんら必要がない。

従って、有限会社ゼンが、のまネコの図形商標の登録を受けたとしても、これがモナーに類似しているか否かにかかわらず、ネットユーザーによるモナーの利用はなんら制限されるものではない。

もっとも、ネットユーザーは、利用を制限されると感じたというよりも、自分達が生み育ててきたキャラクターを、エイベックスのような大企業が営利目的に利用するのは許せない、という感情が支配したものと思われる。

企業の論理からすれば、商標登録などの権利保全は当然であるが、原作者が明確でないキャラクター商品の販売は、消費者からの支持を受けないという意味で、本件は貴重な教訓を企業に与えたものといえよう。

故人となったダイエーの中内氏が、戦後安くてうまいものはいくらでも売れたが、最近では何を消費者が求めているのかが分からなくなったと述懐したそうである。こののまネコ騒動は企業の論理だけでは、消費者に受け入れられないということを如実に示した例といえよう。

鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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