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Q. Google Library プロジェクトは著作権侵害か?

Yahooの「Internet Archives」は著作権切れの書籍が対象

このように、紙に印刷された本を読むという伝統的な読書の形態に対して、デジタルで本を読み、読んだページに応じて料金を支払うというビジネス形態が加わることになる。

さらに、Yahooも「Internet Archives」やカリフォルニア大学などと共同で、世界中の本をデジタル化して、どの検索エンジンでも検索でき、またダウンロードも可能にするというプロジェクトを進行させている。

Yahooのこのプロジェクトは、Googleのプロジェクトと異なり、著作権の切れた本と著作権者が同意を与えた場合のみデジタル化を行っている。書籍のほか、スピーチ、録音テープ、ビデオ、音楽もデジタル化の対象に含まれている。カリフォルニア大学の10のキャンパスに所蔵されている3300万冊の書籍中15%について著作権が切れていると推測されている。

デジタル化により書籍自体が売れなくなるのではという出版者側の心配に対しては、ネット上で簡単に書籍を検索したり、無料でダウンロードすることができるようになれば、一般読者に対する普及度は飛躍的に伸びることになり、それに比例して、販売も増加するという予測がなされている。

デジタル化は、印刷物の販売を減少させるという証拠はないという。むしろ、著作物をデジタル化し、ネットでアクセス可能になった場合、当該著作物を検索するのが容易になり、当該著作物の引用は、2倍または4倍になるというデータがあるともいわれている。

Googleの検索抜粋サービスはフェアユースにあたるか

以上の経緯で、米国著作権法上、Googleの主張するように、著作権の存続期間中の場合、検索されるキーワード前後の最少限の内容か、いくつかの文章、あるいは抜粋のみが表示されるという場合は、「フェアユース」になるかどうかを検証してみたい。

一般的にフェアユースとは、ある著作物に対してコメントを加えたり、批評したり、報道したり、教育・研究目的で使用したり、パロディ化する場合には、著作権者の許可なく、著作物を利用することができるとする理論である。もし、著作権者から著作権侵害を主張されても防禦することができるものをいう。

フェアユースは大きく分けて2つに分類される。その第1は、コメントおよび批評としての使用であるが、次のような例が挙げられる。

  1. ある論文を批評のために引用し、コメントを加えたり、批評をすること。
  2. ある医学上の論文をニュースとして発表すること。
  3. ある作家の文章を教師が学校の授業でコピーして学生・生徒に配布すること。
  4. ある週刊誌の記事を裁判所での類似事例として引用すること。

フェアユースの第2は、パロディとして他人の著作物を使用することである。

また、判例上、フェアユースと認定される場合の要件として次のものが挙げられる。

  1. 使用の目的と性質(営利目的であるか、非営利目的であるか、また、原作に対して新たな表現や意味を与えているか。)
  2. 著作物の性質(原作が出版されているか、未発表のものであるか等。原作が発表されていれば、引用に対しても許容される幅が広いのでフェアユースの余地がある。著作者は最初の公表に対する方法を決定する意向が大きく、決定の幅が広いからである。)
  3. 引用された著作物の量と重要性(原作の引用が少ないほど、侵害と主張される確率は低く、フェアユースとなる可能性がある。しかし、原作の主要部分か否かが決め手となる。)
  4. 著作権を使用することによる潜在的マーケットに与える効果(原作者の収入を減少させたり、原作の潜在的なマーケットに影響を与える場合には、侵害と主張される可能性が大きくなる。)

Google Libraryは著作権侵害をクリアできる可能性が高い

以上の判例理論から判断すると、今回のGoogle Library プロジェクトは、第1に、使用の目的と性質から見ると、非営利目的で原作の検索を可能にし、読者に対して新たな利用方法を提供している点で、第1の要件はクリアーしていると思われる。

第2に、著作物の性質からして、すべて原作は出版されているので、この要件もクリアーしている。

第3に、引用された著作物の量と重要性であるが、Googleは、引用されるのは、検索する用語や文書の最少限度であり、引用の範囲内に属すると主張しているが、実際、どの程度が引用されるのか、具体的な引用の内容、程度がフェアユースと認定される決め手となると思われる。

第4に、著作権を使用することによる潜在的マーケットに与える影響は、埋もれている原作を一般の目に触れやすくする意味で、むしろ原作者や出版者にとっても利益が大きい場合も多々あるものと思われるので、第4の要件もクリアーすると思われるが、原作者や出版社に与える経済的影響は予測がつきにくいと思われる。

以上のとおり、Google Library プロジェクトは、従来の紙に印刷された本を本屋で購入して読むという形式に変革を加え、アメリカとイギリスの有数の大学図書館や公共図書館に所蔵されている本を検索し、場合によりある程度内容を読むことができるというプロジェクトである。つまりは人類の知識を世界中で共有することを可能にする画期的なものである。

著作権者の著作権を侵害することは避けなければならないことはいうまでもないが、具体的な検索と、文章の引用の程度により裁判所の判断は異なると思う。この新しい企画は、まさにインターネットのもつ空間を超える機能を駆使したものであり、今後の裁判所の判断に注目したい。

鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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